
勝利の秘訣【技術編】1
『攻撃はスピードこそ命。素早く、素早く、素早く! 相手より先に動き、先に当てろ!』

【解説】
《攻撃において重要なことは、攻撃のスピードにあり!》
武道であれ、格闘技であれ、勝負(試合)に勝利するためには重要な要素があります。
それは“相手より先にこちらの攻撃を当てる”、ということです。
しかし、こちらが攻撃をしかければ、相手は防御またはカウンター攻撃を仕掛けてきます。
せっかく先手を打って攻撃を仕掛けても、反撃をくらったり、防御されては意味がありません。
ですから、攻撃において重要なことは、「攻撃のスピード」なのです。
相手より先に動き、相手が対応できないスピードで攻撃することで相手に防御させずに攻撃技を決めることができます。
ですから、攻撃において重要なポイントはスピードとなるのです。
(ノックダウン制の格闘技では別の要素が入る)
逆に言うと、“相手に見切られるような速度での攻撃は意味がない”、と言うことができます。
空手や拳法で言えば、“受けられて”反撃をくらう。
ボクシングやキックボクシングでは、“かわされて”カウンターをくらう。
と、なってしまいます。
ですから、勝利を掴みたいならば攻撃におけるスピードが重要なのです。
キックボクシング界の天才と言われている那須川天心選手の強さの秘密は「スピード」にあります。
彼は攻撃のみならず、動きすべてが他の選手よりも速いのです。
攻撃のスピードが速いため、対戦相手は対応が取れない、または遅れるのです。
ですから、限られた制限時間内で勝敗を競う競技としての武道や格闘技において、素早い攻撃は重要な勝利の秘訣となります。
では、攻撃力であるスピードをどうやって身につけるのか?ということになります。
《攻撃スピードをアップさせる秘訣》
まず基本的には、スピードをあげようと練習(訓練)しなければスピードは上がりません。
ただ、漫然と練習をしていたのでは、初めから持っている身体能力以上の速度は身につかない、ということです。
武道初心者や格闘技初心者にとっては、スピードアップを阻害する要因を無くすことがスピードアップにつながります。
〈素早い攻撃(動き)を阻害するもの〉
素早い攻撃(動き)を阻害する大きな要因が3つあります。
1.「力み」
身体能力や身体的特徴は人さまざまです。
努力によって補えるものと補えないものがあります。
ズバリ言ってしまうと、攻撃速度が速い選手は「力み(りきみ)」がありません。
つまり、体に無駄な力が入っていない、武道でいう「自然体」の状態にあるのです。
普通の表現でいうと、リラックスしたような状態ということです。
攻撃に移るとき、相手の動きに反応するとき、体が力んでいるとワンテンポ遅くなります。
武術の基本中の基本が「自然体」なのです。
自然体とは、無駄な力が体にいっさい入っていないのに、闘志を身にまとい、瞬時に攻撃または防御に入れる状態のことです。
武術初心者の人は、どうしても力んで攻撃をします。
矛盾するように聞こえるかもしれませんが、力むと攻撃するスピードは落ちるのです。
ですから、体から無駄な力みを取る訓練が必要です。
2.「恐怖」
武道初心者が初めて試合にでたり、目上の人と組手などの練習をするときに、心にある感情が生まれます。
それが「恐怖」です。
相手が強いと思った瞬間に身体は硬直し始めます。
ですから、武道者、格闘技選手はどうしても「恐怖心の克服」が必要です。
恐怖心は体を硬直させ、攻撃するスピードが落ちることになるからです。
恐怖心を克服するには?
どんなに強いプロボクサーでも、相手が強敵であると、心の底では「負けるのではないか」という気持ちが心のどこかに芽生えます。
それを払拭するために「大口」を叩く選手も多いのです。
「対戦相手を倒してやる」「俺には敵わない」などと公言することで、自分に暗示をかけて恐怖心を克服する選手は多いものです。
恐怖心を克服する究極の方法はひとつしかありません。
「いま、自分が持っている実力以上の厳しい練習をすること」
つまり、試合前にやるだけやったという気持ち、厳しい練習を耐え抜いてきたという気持ちが自信となり、その自信が恐怖心を消していきます。
ですから、少なくとも相手より多く練習する、相手より厳しい練習を積む、そのうえで試合に臨むことです。
3.「緊張」
「力み」と「恐怖」に似ていますが、「緊張」も攻撃(動き)のスピードを阻害する要因です。
「緊張」の場合もまた、身体を硬直させ、普段できる動き(攻撃など)が出来なくなる要因となります。
「緊張」は、主に勝ち負けをこだわる気持ちからきます。
いわゆるプレッシャーです。
競技である以上、勝ち負けにこだわるなといっても無理でしょうが、逆説的に聴こえるでしょうが、勝利したければ勝ち負けにこだわらないことです。
(初心者の場合。プロは別な観点があります)
武道初心者の人が試合で緊張を防ぐには、「勝ち負けを考えず、ただ、いまの自分の全力をだすことだけに集中する」ことです。
いま持っている自分の全力がだせたら「自分に勝利した」「全力をだして負けるのなら本望」と思うことです。
身体と精神は密接に結びついています。緊張や恐怖を感じていると普段練習で出来ていたことができなくなります。
本番(試合)で練習以上の力を発揮するにはあまり勝ち負けにこだわらず試合に臨むことです。

《まとめ》
「力み」「恐怖」「緊張」を克服できれば、攻撃におけるスピードはあがります。
さらなるスピードアップには「柔軟さ」があります。
「柔軟さ」とは、身体の柔軟さと精神の柔軟さがあります。
(それについては別の機会にて)
今回は攻撃におけるスピードに関して論じましたが、攻撃におけるスピードが速いということは、実は動き全体が速いということを意味します。
攻撃が速い選手は防御行動も早いのです。
『攻撃の要はスピードにあり!素早い動きを阻害する要因を克服せよ!』

結局、素早い攻撃ができる選手は“しなやかさ”を身につけているのです。
柔らかい関節などの身体機能。
無駄な力が入っていない自然体の状態。
プレッシャーや恐怖、緊張に支配されない精神。
柳のように柔軟な動きができれば、攻撃のスピードはアップします。
相手よりも速く反応し、相手よりも速く相手の懐に入り、相手よりも速く当てる。
それが勝利をもたらします。
『攻撃はスピードこそ命。素早く、素早く、素早く! 相手より先に動き、先に当てろ!』
押忍!