勝利の秘訣【技術編】13
『渾身の気合で打つ。そして肩の力を抜いて打つ。この矛盾する二つのことをどう融合させるか。矛盾を融合した境地こそ真の武道家』
【解説】
《武術の力とは総合力》
「渾身の力で打つ」
こう言われると、武術初心者(武道初心者)の方は単純に力を込めればいいと思ってしまいます。
その力とは文字通り「筋肉による力」でしょう。
しかし、武術や武道においての力とは「総合力」に近いものです。
体重移動、腰の動き、回転の動き、呼吸、柔軟性、脱力、そして“気”。
決して筋力だけのものではないということです。
体重移動や腰の動きについては別の記事で語っていますので、ここでは割愛します。
しかし、初心者の方からすると、「呼吸」はまだなんとなくわかるが「柔軟性?」「脱力?」と疑問に思うのではないでしょうか。
それはまだ強さ(力)とは何かを悟っていないからです。
《百獣の王は猫科の生き物》
自然界で百獣の王は猫科の生き物です。
猫科の生き物でも草原に住むライオンと密林に住むジャガーでは少し違いがあります。
武術におけるヒントがあるのはどちらかといえばジャガーの方です。
獲物に気づかれず高所や秘所から襲い掛かる。
獲物が気づいたときは急所をやられている。
あまりにも一瞬のことなので襲われた方は何が何だかわからない。
そこにあるのは何か?
それこそ「柔軟性」なのです。
「柔軟性」とは、無駄な力を抜いていながら一瞬でMaxパワーを発揮できる状態のことです。
柔軟さはしなやかな動きを実現します。
しなやかであるということは、相手に気がつかれずに攻撃できることを意味します。
武術において相手の動きを読むのは“動きの兆し”です。
これを武道では「おこり」といいます。
「おこり」とは、攻撃などの動きの兆しといえます。
ですから、相手の動きを読むとは「おこり」を読むことです。
しかし、逆に攻撃するほうは「おこり」を消します。
消さないと一瞬で動きを察知され、対処されてしまうからです。
(乱戦の状態での話は除く)
武術や格闘技をする人は必ず筋力トレーニングをします。
当然ながら武術や格闘技にとって筋力は必要不可欠のものです。
しかし、それに偏ると強くなれないという矛盾が発生します。
武術の奥深さとは矛盾するものを融合する難しさなのです。
筋力を増強すると同時に柔軟性を見につけて相反するかに見える2つの力を融合するところに真の力が生まれるのです。
《柔軟性とは?》
- 身体、筋肉と関節の柔らかさ。
- 無駄な力を抜いた状態。
関節が柔らかくなればなるほど技の多様性と瞬発性が上がります。
逆に関節が硬く筋肉に頼る動きは“遅く”なります。
重要な点は、無駄な力を抜くことで「おこり」を起こさず、瞬発力を生み出すことです。
力を抜くからこそ力が増強されるということを見につけることが初心者の目指す境地(状態)です。
無駄に力が入っていると体が硬直し動きが遅くなります。
無駄な力を抜いているからこそ瞬間的に、スイッチが入ったように一瞬で強い力が発揮できるのです。
それには身体の柔軟性と心の柔軟性が必要です。
心が緊張や恐れに支配されていると必ず身体は硬直します。
もうひとつ無意識に硬直する状態があります。
それは「慢心」です。
己惚れているとその心境が必ず身体に表れます。
恐れと警戒は“似て非なり”なのです。
ですから、単純に身体の脱力という意味に留まらず、心の中の“無駄な気持ち”も排除することが必要です。
身体も心も健全である必要があるということです。
初心者の方には難しいことですが、これは武術、武道には避けて通れない道なので、心得てください。
力を出すために力を抜く状態を作る。
力を発揮する時には一瞬で最大値に持っていく。
そのためには柔軟性が必須だということです。
筋力をつけると同時に柔軟性を持つという矛盾したことを融合して初めて真の武道家(武術家)となるのです。
《まとめ》
武術や武道においての“力”とは「総合力」。
体重移動、腰の動き、回転の動き、呼吸、柔軟性、脱力、そして“気”。
「柔軟性」とは、無駄な力を抜いていながら一瞬でMaxパワーを発揮できる状態。
武術の奥深さとは矛盾するものを融合する難しさ。
筋力増強と同時に柔軟性という一見矛盾する2つの力を融合するところに真の力が生まれる。
重要な点は、無駄な力を抜くことで「おこり」を起こさず、瞬発力を生み出すこと。
心に「緊張」「恐れ」「慢心」があると必ず身体は硬直する。
単純に身体の脱力という意味に留まらず、心の中の“無駄な気持ち”も排除することが必要。
力を出すために力を抜く状態を作る。
力を発揮する時には一瞬で最大値に持っていく。
そのためには心と身体の柔軟性が必須。
筋力と柔軟性の相反するかに見える2つの力を融合するところに真の力が生まれる。
技術編13
『渾身の気合で打つ。そして肩の力を抜いて打つ。この矛盾する二つのことをどう融合させるか。矛盾を融合した境地こそ真の武道家』
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