
勝利の秘訣【技術編】14
『突きと蹴り、両方に共通して大切なのは“引き”だ。引き戻すことで次の攻撃態勢や防御行動に素早く入ることができる。よって、突くよりも早く引き、蹴るよりも早く戻せ!』
【解説】
《突きと蹴り共通して大切な技術は「引き(戻す)」》
今回は意外なコツを取り上げます。
空手や拳法、ボクシング等に共通し、立ち技系の武術、格闘技に共通する大切なこと(技術)があります。
具体的に言うと「突き」と「蹴り」にとって必須の技術です。
それが「引き」です。
「引き」とは、突いた腕又は蹴った脚(足)を身体の中心に引き戻すことです。
人間の身体の構造は、腕や足が体に密接(中心にある)している状態の方が力を発揮できるようになっています。
逆に言うと、腕や脚が体の中心線から離れれば離れるほど力は弱まります。
突きや蹴りなどの攻撃技は、身体の中心から生まれた力(パワー)を腕や脚に伝えていくものです。
決して腕だけ、脚だけの力で技が成り立つわけではありません。
突きを腕の筋力、蹴りを脚の筋力だけで行おうとすると本来の力が発揮されません。
筋力に頼った技は、体力を激しく消耗し、戦闘力の低下を招きます。
仮の話をすると、一人で集団を相手にする場合、激しく体力を消耗する様な技術では、やがて倒される運命となります。
それは相手に倒された、というよりも自滅するに近い状態を意味しています。
武術の強さとは、筋力による強さではないことを深く理解してください。
では、「引き」がなぜ大切なのかを考えます。

《“引き”はなぜ大切なのか?1》
「引き」には前提があります。
それは、そもそも腕や脚をある程度引いている状態にあることです。
つまり、腕や脚を身体の中心線の近くに置くことです。
具体的に言うと、肘を体につける(脇をしめる)、膝を体につける(脚を出来るだけ畳んだ状態にする)ということです。
それが意味することは、「バネの溜めの役割(力のダム)」をしていることです。
腕は肘が延びていると力が逃げてしまいますし、蹴りにおいても脚が伸びた状態(身体から離れている状態)にあると力は半減します。
ただし、腕や脚が身体から離れていても力を発揮する技術(武術)はあります。
ここでは基本的なことを論じています。
バネは縮んでいるからこそ威力を発揮し、ダムは水が溜まっているからこそ大きな電力を生み出すのです。
人間の身体の構造も、基本的にこれと同じです。
ですから、武術初心者(武道初心者)の方は、腕を締める、脚をたたむ、ということを意識にして技を身につけることが大切です。
技を繰り出す前の腕や脚をできるだけ身体の中心線に近づけた位置から発する、ということを覚えておいてください。
《“引き”はなぜ大切なのか?2》
「引き」が大切な理由の2つ目は、引きを速くするから「連続攻撃」が可能になる、ということです。
腕や脚を素早く引き戻すことで、2手、3手目の攻撃が可能となるのです。
つまり、初手と2手目の間に時間差を埋めるために必要な技術が「引き」なのです。
攻撃を出した後に腕や脚が伸び切ってしまうと、次の攻撃ができません。
次の攻撃、または連続攻撃をするためには腕や脚を素早く引き戻すことが必要条件なのです。
それも「素早く」行うことが必要です。
初心者の方は分かりづらいかもしれませんが、引きが強ければ強いほど(引きが速ければ速いほど)攻撃力がアップします。
腕や脚を素早く引き戻すからこそ次の攻撃を素早くできるのだ、ということを理解して習得してください。
突きや蹴りを出すことは誰でも意識して練習しますが、引くことを意識しない人がいます。
「引きが速いから出す突き(又は蹴り)が速くなる」という武術の原理を習得してください。

《“引き”はなぜ大切なのか?3》
「引き」が大切な理由の3つ目は、引きを速くするからこそ瞬時に「防御態勢」を取ることが出来る、ということです。
攻撃した瞬間と後、これが隙の生まれる時なのです。
前項で腕や脚を素早く引き戻すから連続攻撃ができると言いましたが、それは同時に「防御態勢を取れる」ということでもあるのです。
攻撃した腕と脚を素早く引き戻すとどうなるのか、「構えの態勢」または「戦闘準備態勢」となるということです。
攻撃した後、腕や脚を素早く引き戻すことによって一瞬で防御態勢を取ることが可能となるのです。
それによって反撃を防ぐことが可能となるのです。
これは1秒もないほんのわずかな時間ですが、武術においてはそのわずかな時間の差が命取りとなるのです。
こちらが突きや蹴りを出しても相手に避けられたり、反撃されたりした場合、腕や脚を素早く引き戻すことで防御することが可能となる、ということです。
ただし、カウンター攻撃やこちらの態勢を崩された場合等は、腕や脚を素早く引き戻すどころか、体勢を崩されてしまうことがあります。
「引き」の重要な意味として「素早く引き戻すからこそ、素早く防御態勢を取れる」ということです。
「引き」が意味することは、「バネの溜めの役割(力のダム)」。
上級者と初心者の違いは、「引きの違い」と表現することも出来ます。
別のいい方をすると、次の攻撃態勢にかける時間の差、攻撃の後の防御態勢を取る時間の差、と言えましょう。
ただし、この時間の差は素人には分からないくらいの差でしょう。
ですが、この差は大きいのです。
最後にひとつ。
素早く引き戻すためのコツがあります。
それは拳や脚が「力の焦点(ヒットポイント)に届いた(当たった)瞬間に力を抜く」ことです。
力んでいると素早く引き戻すことができません。
練習では、「ヒットポイント(攻撃の焦点)に届いた直後、瞬間的に力を抜く」ことを意識することです。

《まとめ》
立ち技系の武術、格闘技に共通する大切な技術が「引きの技術」。
「引き」とは、攻撃した腕又は蹴った脚(足)を身体の中心に引き戻すこと。
「引き」の前提→「腕や脚を身体の中心線の近くに置く」。
バネは縮んでいるからこそ威力を発揮し、ダムは水が溜まっているからこそ大きな電力を生み出す。人間の身体の構造も、基本的にこれと同じ。
引きを速くするから「連続攻撃」が可能になる。
初手と2手目の間に時間差を埋めるために必要な技術が「引き」。
引きが強ければ強いほど(引きが速ければ速いほど)攻撃力がアップする。
引きを速くするからこそ瞬時に「防御態勢」となることが出来る。
「素早く引き戻すからこそ、素早く防御態勢を取れる」。
上級者と初心者の違いは、「引きの違い」(次の攻撃態勢にかける時間の差、攻撃の後の防御態勢を取る時間の差)。
素早く引き戻すためのコツ
拳や脚が「力の焦点(ヒットポイント)に届いた(当たった)瞬間に力を抜く」こと。
力んでいると素早く引き戻すことができない。
技術編14
『突きと蹴り、両方に共通して大切なのは“引き”だ。引き戻すことで次の攻撃態勢や防御行動に素早く入ることができる。よって、突くよりも早く引き、蹴るよりも早く戻せ!』
押忍!