
勝利の秘訣【攻防編】1
『独りよがりの戦いを止め、相手の動きに合わせて戦え。
臨機応変、変幻自在が戦いの理想形』
【解説】
《戦う(試合をする)ということは?》
武道や格闘技はケンカや殺し合いではありません。
競技としての試合に勝利するということと、本当の戦争で人を倒す(殺す等)ことでは全く違うわけです。
競技には必ずルールがあって、審判がいます。
勝利の結果は、ノックダウン制であればKOまたはTKO、KOがなければ判定で決着をつける。
ポイント制ルールであれば、ポイントを多くとった方が勝利する。
そうしたルールの中で戦う(試合)わけですが、武道(格闘技)初心者が気をつけることがあります。
それは「相手がいる」ということです。
当たり前、なんて言わないでくださいね。
初心者の試合における戦い方は、一言で言ってしまうと「独りよがりの戦い方」です。
具体的に言うと、「いつも練習している技をだす」「得意な攻撃を繰り返す」「何も考えないで本能で戦う」などです。
プロボクサーやプロの格闘技選手は、対戦相手が決まったら必ずやることがあります。
それは「対戦相手の分析」です。
そこから相手の弱点や長所を見つけて“対策”を練ります。
アマチュアの選手でも同じです。
えっ、対戦相手は当日じゃないとわからないよ?
そうです、そこがアマチュアのトーナメント戦の難しいところです。
重要なことは、戦い(試合)とは、「相手を制すること」だということです。
「相手を・・・」なのであって、「自分が・・・」という発想ではないのです。
肝心なことは、「自分中心の発想で戦うのではなく、相手の動きに合わせて戦う」ということです。
初心者の方は、ここに意識がいきません。
まず、ここを意識してください。
《初心者が陥りがちな戦い方》
アマチュアの試合のほとんどがトーナメント戦でしょう。
事前に対戦相手の情報は分らないことが多い。
(同じ団体であれば、情報はある程度集められる)
そうすると初心者の人が試合に勝つために何をするのか、というと?
相手がどんな相手でも、「普段練習している技を出す」「得意と思っている技を出す」「何も考えずにがむしゃらに本能のままに戦う」ということになりがちです。
それでも相手より経験や実力が高ければ勝利することができます。
ですが、それでは数試合を勝ち抜いて優勝したり、さらなる勝利を続けることはできません。
要するに、武道初心者の方は、「相手を見ていない」のです。
「相手を見る」とは、相手がどんな得意技を持っているのか、どんな攻撃をしてくるのか、こちらが攻撃を仕掛けたらどんな反応をするのか、など相手の動きに関することです。
初心者の方は緊張から、相手の動きを冷静に見ることができずに、独りよがりの戦いをしてしまいがちだということです。
つまり、相手に合わせてこちらの攻撃や動きを変化させられないのです。
《勝利につながる理想の戦い方とは?》
肝心なことは自分中心の発想で技を出すのではなく、相手をよく見て相手に合わせた技や攻撃、または防御をすることです。
がむしゃらに戦ってもトーナメント戦を勝ち抜くことは至難の業です。
大事なことは、「相手に合わせて攻撃、または防御する」ということです。
相手がこう出てきたからこうする、という相手の動きを中心として、こちらの攻撃又は防御を決めていくことです。
「相手に合わせて攻撃、または防御する」といっても、とても難しいことです。
長い修練と才能も必要です。
ですが、そういうことを常に意識して練習をしなければ、身に付くことはありません。
戦争論である「孫子の兵法」では戦いの理想を「水」にたとえています。
「水」は臨機応変に形を変えていく、丸い器に入れれば丸くなり、四角い器に入れれば四角となる。
つまり、水には形がなく、対象によって姿を変化させる、ということです。
個人戦の戦い方の理想も同じです。

自分がこういう攻撃が好きだからその攻撃ばかりする、自分の得意技はこれだからその得意技を使う、ということだけで勝利し続けることは難しいことなのです。
高度な技を習得し、常に勝利する武術者は必ず相手の動きに合わせて戦術(作戦)を変えます。
戦い(試合)の理想は、「相手を中心とした発想から自分の戦い方を導き出す」なのです。
武道初心者の方はどうしても対戦相手を見ているようで見ていない、独りよがりの戦い方をしていることが多いのです。
戦いに勝利するには「臨機応変」「変幻自在」に戦い方を相手に合わせて変化できることが重要なのです。
《まとめ》
戦い(試合)に勝つためには、相手の動きに合わせた対応(動き)が重要となる。
相手の動きに関係なく、自分勝手な戦い方をしても、勝利し続けることは難しい。
相手をよく見て、変幻自在に戦い方の対応を変えることこそ普遍的な勝利の秘訣である。
よって、特定の技に偏った技の取得は一時的な勝利を得ることはできるが、継続的な勝利を導き出すことは難しい。
初心者は、基本を身につけることが最初の試練だが、基本をしっかり身につけた後は、特定の技や動きに偏らずに戦うことができるように修練するべき。
(逆の意味で得意技を磨く、という視点もありますが、それに別の機会にて語ります)

攻防編1
『独りよがりの戦いを止め、相手の動きに合わせて戦え。
臨機応変、変幻自在が戦いの理想形』
押忍!