勝利の秘訣【攻防編】3
『戦上手はタイミングをよく知るものなり。相手が攻撃してくる気配を読み、自分が攻撃するチャンスを見つけろ! さらに、相手の攻撃してくるタイミングを潰し、自分が攻撃するタイミングを作り出せ! 全神経を集中してタイミングをつかめ!』
【解説】
《闘いに勝利するものはタイミングを制する者》
武道、格闘技の試合において「間合いを制する」ことと同じくらい重要なことがあります。
それが「タイミング」なのです。
「間合いを制する」ことが、「空間(距離)の攻防」だとすると、「タイミング」は「時間の攻防」と言えます。
つまり、攻撃のチャンスを的確につかむ、ということです。
武術者は相手の“息づかい”を感じるようでなくてはいけません。
相手の息づかいを感じるとは、相手がどのような状況なのかを感知するということです。
疲れている、恐れている、様子を見ている、誘っている、戸惑っている、そして「攻撃を仕掛けようとしている」などを感じることが重要です。
武道、格闘技初心者の方は、「相手を感じる」ということにあまり意識がいきません。
意識がいっても、相手がどのような状態なのかを判定できません。
この「相手の状態」を見極めることが、勝利するためには重要なのです。
しかし、この難しさは相手あってのことなので、基本練習などでは体験できないことなのです。
組手やスパークリングなどの疑似試合を行わない限り、「相手の息づかい」を感じ取る訓練はできません。
空手の流派のなかでは、型練習ばかりやっているところがありますが、そうするとこの「相手の息づかいを感じ取る」という武術者にとってとても大切な能力がなかなか身につきません。
「相手を感じる」ことができてはじめて「タイミング」がつかめるからです。
もちろん、息づかいだけで相手を感じるわけではありませんが、「息づかい」が意味することは2つ。
一つは身体の状態。
攻撃をしようと考えているのか、様子をみているだけなのか、などの相手の戦闘状態に関することです。
もう一つは、心理状態です。
相手が何を考えているのか、ということを感じ取ることが大切です。
武術と「息」は切っても切れない関係にあります。
力を入れるとき、技を出すときは、必ず息を吐きます。
(気合の声を出すということは、息を吐いているのです)
つまり、息を吐き出す瞬間が攻撃をしてくる瞬間なのです。
つまり、闘いにおいて相手の「動き」と「息づかい」から相手が攻撃しようとするタイミングを読む、又はこちらが攻撃するタイミングを掴む、ということです。
それは1秒以下の短い時間の攻防なのです。
タイミングがズレてしまうと、せっかくの得意技も渾身の技も役にたちません。
戦上手は戦う時(タイミング)を知る者ということを武術者は肝に命じるべきなのです。
《相手が攻撃してくるタイミングを知る》
相手の攻撃を防ぐことができなくては、勝利することは困難です。
逆に、そのタイミングで攻撃してくるとは思わなかった、という経験をしている方も多いでしょう。
試合に勝ち続けている選手は、攻撃に有利なタイミングを独自につかんでいることが多いのです。
試合に勝利するためには、相手が攻撃してくる「タイミングを外す」、又は「タイミングを潰す」ことが重要です。
では、多くの戦上手がする攻撃のタイミングとはどんなものでしょうか?
代表的なものは以下の2つ。
〈フェイントのあと〉
フェイントは相手を騙す技です。
何を騙すのかというと、こちらが攻撃をするぞ、と思わせて相手の意識を防御意識にしてしまうのです。
相手が防御意識に切り替わったら攻撃しづらくなるじゃないか、と思う方がいるでしょうが、フェイントされた相手は一瞬の防御意識のあとにほんの一瞬だけ“隙”が生まれます。
それはこういうことです。
相手は、攻撃されると思って身構えたのに相手が攻撃してこない。
「なんだフェイントだったのか」と一瞬だけ安心します。
その隙は1秒以下のほんのわずかな時間です。
「なんだフェイントか」と思った瞬間が実は無防備状態なのです。
そのほんのわずかな瞬間を作り出すためにフェイントを出すことも多いのです。
(フェイントは他にも意味があります)
ですから、相手がフェイントをしてくるということは、こちらのタイミングを潰そうとしている、又はこちらの防御態勢を潰そうとしている、そのことで自分が攻撃する絶妙な瞬間を作り出そうとしているということなのです。
だから、フェイントの後には相手が攻撃してくることが多いのです。
初心者の方は、無意味にフェイントをだすことがありますが上級者や試合運びの上手な選手には通用しませんので、ご注意ください。
〈ほんのわずかな静止状態のあと〉
フェイントと同じくらい頻度の高い相手が攻撃してくるタイミングに「静止状態のあと」があります。
流派や武術の種類によっては、激しくステップを踏むものもあれば、すり足で迫ってくるものもあります。
ですが、共通しているのは、攻撃に移る前に相手は「攻撃の瞬間を図っている」ことは間違いないのです。
すると無意識に、攻撃に入る前に一瞬だけ静止状態となることがあります。
あるいは動きがほんの少しだけ遅くなることがあります。
それが相手の攻撃してくる予兆です。
いずれにしても1秒に満たない0.1秒くらいのほんのわずかな時間です。
その“一瞬”を捉えることです。
上級者の場合は、この「ほんのわずかな静止状態」を意図的に行っていることが非常に多いです。
それは「ほんのわずかな静止状態」を作ることで、相手を誘っているのです。
相手から攻撃させようとしているのです。
「相手の動きが止まった」と思って、「いまが攻撃のチャンス」と攻撃に転じるその瞬間を狙って、逆に攻撃を仕掛けるのです。(カウンターなど)
これを空手で「後の先」と言います。
相手が攻撃しようとしたそのわずかな瞬間にそれを察知して、逆にこちらが攻撃を先に仕掛けて相手に攻撃を当てる、という動きです。
実は、お互いにそのタイミングを意図的に作ろうとするのが上級者たちの攻防なのです。
「阿吽の呼吸」という諺がありますが、武道の場合「相対する呼吸」を掴むことが重要なのです。
「相対する呼吸」=「攻撃のタイミングを掴む」なのです。
《こちらが攻撃するべきタイミングを掴む》
相手が攻撃してくるタイミングは自分が攻撃するタイミングでもあるのです。
相手の攻撃を考えるということは、こちらの防御を考えるということであり、こちらの攻撃を考えるということは、相手の防御を考えるということでもあるのです。
相対峙している相手に攻撃を仕掛けるということは難しいことです。
なぜなら、相手は攻撃しようとしているし、こちらの攻撃を防ごうとしているからです。
ですから、上級者は攻撃できるタイミングを自ら作り出そうとフェイントや静止状態をするのです。
攻撃を仕掛けるタイミングを掴むことは非常に難しく、上級者でも完成したと実感している人は少ないでしょう。
大切なことは「攻撃にはタイミングがある」ということを知ることです。
そして有効なタイミングを作り出せたら上級者の仲間入りです。
《まとめ》
攻撃には効果的なタイミングがある。
相手の「動き」と「息づかい」を感じることで攻撃のタイミングを掴む。
相手が攻撃を仕掛けてくるのは「フェイントの後」と「静止状態の後」が多い。
闘いには「時間」と「空間」を制するという意味がある。
タイミングとは、結局、闘いにおける「攻防の瞬間を制する」ことを意味する。
どんなにいい技を持っていてもタイミングを掴めない者は勝利者になり得ないことを肝に命じること。
攻撃のタイミングは作り出されるものであり、自ら生み出すものである。
タイミングを間違うことは自滅への道であり、タイミングを制する者は勝利を掴む者である。
攻防編3
『戦上手はタイミングをよく知るものなり。相手が攻撃してくる気配を読み、自分が攻撃するチャンスを見つけろ! さらに、相手の攻撃してくるタイミングを潰し、自分が攻撃するタイミングを作り出せ! 全神経を集中してタイミングをつかめ!』
押忍!