心得17
『己の強さを誇るために闘うな。大切なもの(人)を守るために闘え! それが「武」の文字に込められた真の意味だ。謙虚に自己鍛錬を続ける者こそが最強の戦士になれる!』
【解説】
《「武」の文字の意味とは?》
武術初心者(武道初心者)の方にぜひ胸に刻んで欲しいことがあります。
それは「武」という文字の真の意味です。
「武」とは「戈(ほこ)を止める」という意味であると昔から言われています。
「戈」とは、戦いにおける武器全般を指すもの。
つまり、戦いを止めさせる、という意味となります。
しかし、「止」には「止める」ではなく「あしあと、すすむ」という意味もあります。
これは、「戈をもって堂々と進軍する」という表現でもあるということです。
つまり、目的は戦いのための戦い(武器)ではなく、戦争を終わらせるための戦い(武器)であるということになり、そのために堂々と戦いをする、という意味なのです。
要するに、「武器を持って潔く戦い、戦争を終わらせる」、という意味なのです。
それが「武」の文字に込められた意味なのです。
ですから「武術者」または「武道者」はそのことを心得なければならないのです。
目的が戦いを終わらせること=平和にある、ということです。
これを別のいい方で表すと、「大切なものを守るために戦う」ということです。
決して、侵略することを目的とするのでも、自分の強さを誇るために他の存在を屈服させるものではない、ということなのです。
これを武術初心者の方は覚えておいてください。
《強さには「正しさ」の裏付けが必要》
とは言え、武術(武道)やスポーツは、生まれ持っての肉体的な優劣が勝敗に大きく関係していることは間違いありません。
肉体的な強さに加え、多種多様な技を習得することで更に強くなる。
そこの落し穴があります。
それは「単なる強さを追い求めるだけが目的となる」という落し穴です。
何のための強さなのか?
ということが真の武術家には必要です。
真の武術家となるには、「己を極限まで鍛える」ということと「弱き者を援ける」「正義を実現するために悪を倒す」という要素を持たねばなりません。
それがなく自分の強さを誇るだけの武術者は単なる天狗です。
天狗の強さとは自己顕示を限りなく求めるだけの強さです。
「己を極限まで鍛える」ことで何が生まれるのか?
人生の中で遭遇する苦難・困難に負けない精神力が身につく。
「弱き者を援ける」「正義を実現するために悪を倒す」とは?
これは自分の持てる力を自分だけのために使うな、ということです。
社会のため、人のために使え、ということです。
その強さとは暴力ではなく、鍛錬によって培った精神力です。
(もちろん暴漢に襲われる人を助けるのに、武術を使用することは防衛の範囲内で許されるべきです)
「武」の意味から導き出される命題は、「守るために戦う者こそ強者となる」ということです。
この場合の「守る」には、「正しさ」が必須です。
正しさを持つためには、己の“自己顕示”や“己惚れ”、“憎しみ”を排除することです。
そこに正義が生まれます。
正義を実現するためにはそれなりの「力」が必要なのです。
その力を提供する一辺が「武術(武道)」なのです。
ただし、自分が必死に鍛錬してきた成果を闘い(試合)で発揮して勝利を勝ち取ることは正当な武の姿です。
ですから、闘い(試合)で手加減する必要はありません。
戦う時は勇敢に闘い、試合終了後は相手選手の健闘を称え、相手から何かを学ぶことです。
《「慢心」は転落の元、敗退の元》
「強さを誇る」
そこには必ず「慢心」が発生します。
慢心が発生すると努力がおざなりになります。
努力がおざなりになると必ず成長が止まります。
成長が止まると必ず弱くなります。
この逆転の論理を武術者は知らねばなりません。
慢心は転落の元、敗退の元なのです。
しかし、常に謙虚さを保ちつづけ、鍛錬を続ける者は必ず強くなります。
自己の強さに酔わず、惑わされず、謙虚に鍛錬を続ける者には隙が生まれません。
慢心すると目標がそれ以上伸びなくなります。
逆に謙虚さがあると目標は永遠に伸びていきます。
ですから、最強の戦士を目指すならば慢心してはいけないのです。
謙虚さを常に保つ必要があるのです。
謙虚さを保つとは「己の力を過信しない」ことであり「己の力を客観的に評価する」ことでもあります。
最大の敵は「慢心」なのです。
その慢心は己の心に生まれるもの。
だから、最大の敵は「己」なのです。
最大の敵(=慢心)に勝つには謙虚さが最強の武器になるのです。
付け加えるならば、謙虚さとは‟自信がないこと”ではないのです。
《まとめ》
「武」の文字の意味とは、「大切なものを守るために戦う」こと。
決して、自分の強さを誇るために他の存在を屈服させるものではない。
武の道にある落し穴とは、「単なる強さを追い求めるだけが目的となる」こと。
真の武術家となるには、己を極限まで鍛え、弱き者を援け、正義を実現するために悪を倒す要素を持つこと。
正義であるためには、己の“自己顕示”や“己惚れ”、“憎しみ”を排除すること。
強さを誇れば必ず「慢心」が発生する。
慢心は転落の元、敗退の元。
最大の敵は「慢心」。
慢心は己の心に生まれるもの。
だから、最大の敵は「己」。
慢心に勝つには「謙虚さ」が最強の武器となる。
心得17
『己の強さを誇るために闘うな。大切なもの(人)を守るために闘え! それが「武」の文字に込められた真の意味だ』
押忍!