『攻防編4 ~得意技を中心とした戦術を身につけることが変幻自在な闘いの始まり!~』
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勝利の秘訣【攻防編】4

『常に変化のある戦いを心得よ。同じ攻撃、同じ防御ばかりを繰り返すな。ワンパターンの攻撃はどんなに優れていても、いつか必ず破れる! しかし、変幻自在に技を変化させれば、主導権は必ずこちらに傾く!』

【解説】

《武術初心者の攻防における特徴は?》

まず初めに言っておくと、武術初心者の場合、得意技を繰り返し使用する傾向があります

武道や格闘技を習うと初めに基本を教わります。
その段階では得意技を身につけていないことが多いと思われます。

基本が身につき、試合に出るようになると、どうしても「勝負に勝ちたい」と思うようになります。
すると、勝つための“技”を考えるようになります。
それはその人の身体的特徴、身体能力、性格にあったものだと思われます。
最初の得意技は、自然と発生していることが多く、その人のさまざまな条件に合致したものであることがほとんどです。
ですから、使い勝手が良く、技を出しやすい傾向があります。

経験が浅い武術初心者の場合、試合に臨んでも「どうやって勝ったらいいのか?」つまり、どんな攻撃をすればいいのか?ということが自分の中にないと、とても不安で闘う闘志も減退してしまいます。
ですから、基本を習得した次の段階は「得意技をつくる」であることは間違いありません。

基本を身に付けた後の武術者の通る道は「得意技を持つ」ということです。

(今回の話は、主にその段階の方が対象です)

この得意技を身につけるということは非常に重要です。
その後の武術者としての特徴や成長に大きく影響します。
ですから、基本技が身についたら必ず「自分にあった得意技を持つ」ことが重要です。

逆に、得意技を身につけることなくそのままいってしまうと、どうして勝利したらいいのか分からず、試合にも上手く勝てず、低迷、混迷の武術の道を歩むことになります。
武術の道の第一歩は基本を徹底的に身につけるであり、第二歩は「得意技」を身につけるなのです。
ですが、経験の浅い武術者が陥る穴は「得意技に頼り過ぎる」ということです。

《得意技を持つことのメリットとデメリット》

〈得意技を持つことのメリット〉

得意技を持つことの最大のメリットは、「自信がつく」ことです。
自信があると試合の緊張感も少し和らぎます。
(まったく緊張しないということはないでしょう)

得意技があると試合に勝利する方程式を描きやすくなります
勝利する方程式を描きやすくなると、思い切って試合運びが出来るようになります。
つまり、「どうやって勝ったらいいのか」という迷いが少なくなり、大胆な行動がとれることで持っている力を全力でだすことに繋がります。
しかし、「どうやって戦ったらいいのか」と迷いながら戦っていると、必ずが生まれます。
また、判断と行動が遅くなります。
それは攻防戦における死活問題へと発展していきます。

要するに「得意技」があると、自信がつき、それは試合運びにおける“迷い”を消す効果が生まれるのです。
武術において“迷い”は、攻撃力と防御力の両方を弱めてしまいます。
得意技があることで迷いなく思い切って試合で勝負できる、ということが得意技を持つことの最大のメリットです。

〈得意技を持つことのデメリット〉

ですが、初心者やまだ経験が浅い武術者は、さまざまなバリエーションの攻撃や防御を取ることができません。

たとえ身に付けた得意技が優れていたとしても、それで勝ち続けることは無理となります。
なぜなら、必ず対戦相手は「対策」を取って来るからです。
「得意技を出させない」「得意技を逆に利用する」「得意技に対応する技を繰り出す」などの戦術を取って来るからです。
トーナメント戦の場合、早ければ1試合目で得意技を使って勝利したあなたの姿を見て2回戦の相手が対策を取ってくることもあります。

よって、得意技を持つこと、正確には得意技ばかりに頼り過ぎる戦術は、その得意技が封じられたときに敗北につながることが多い、ということです。
(得意技が複数ある熟練の武術者はこの話の対象から外れています)

要するに、得意技に頼り過ぎていると、やがて敗北がやってくるのです。
得意技はライバルに必ずと言っていいほど、“対策を取られる”ということです。
例外的に対策を取っても通用する得意技がありますが、それは熟練の武術者や練習に練習を重ねた者の姿なので、まちがえないでください。

何よりも得意技に頼り過ぎていると、他の得意技などを身につける努力が怠慢になり、武術者としての成長が止まってしまいます。

つまり、得意技にばかり頼っていると対策を取られ、得意技を封じられて「どうやって勝ったらいいのか?」という迷いの世界に再び陥ることになるのです。
頼り過ぎるということは、他の戦術を持っていない、他の闘い方(試合運び)を考えていないからです。
それがデメリットです。

《攻防戦とは結局、主導権の握り合いである!》

得意技を持っていることの一番大きな意義は「試合の主導権を握れる」ということです。
結局、武術の試合(攻防戦)とは、主導権をどちらが握るかということでもあるのです。

相手が恐れる又は強く警戒する得意技を持っているということは、相手へのけん制になるので、試合の主導権を持つことに繋がっていきます。

優れた得意技を持っているだけで、相手はそれを必ず警戒します。
それは相手の動きにある種の制限を与えているのと同じ効果を持つことになります。
また、相手がこちらの得意技を警戒しているならば、それに合った対応を取ってくるはずだ、という戦術の読みができやすくなります。
こちらはさらに相手の裏を読みやすくなるということになります。

ただし、この問題は自分にも跳ね返ってきます。
対戦相手に得意技がある場合、逆にあなたがそれを対処する立場になるからです。
その場合は、こちらの得意技と相手の得意技の組み合わせを考えなければいけません。
その話は別の機会に譲ります。

《変幻自在な武術者になるための方法とは?》

まずは1つ、得意技を身につけることです。
そして2つ目の得意技、3つ目の得意技と複数の勝利を得られる方程式を作る技を身につけることです。

そして、得意技を中心として、相手が自分の得意技をどう封じるか、ということを考えた戦術(闘い方)を想定して、得意技の前後の技や動きを組み立てるのです。
一番ダメなのは得意技の単発です。
それでは、せっかくの得意技も効果を発揮しません。

つまり、得意技を中心にして戦術シミュレーションをして、得意技を活かすための戦術をいくつか組み立てるのです。
また、得意技を持つことは不得意な技などがあることでもあるので、得意技が決まらない場合の防御についても戦術シミュレーションしておくことです。

得意技を中心として攻撃と防御の戦術を組み立てるのです。

経験豊富な武術者は、無意識に変幻自在に対応しますが、初心者や経験の浅い方がいきなりそうした方と同じことはできませんから、まず得意技を身につけ、それを中心とした前後の攻撃や防御を戦術として身につけることである程度の変幻自在な動きを身につけられます。

《まとめ》

基本を身につけた武術者が通る次なる道は「得意技」を身につけること。
得意技を持っていないということは、「どうやって勝ったらいいのか?」という迷いの中にいることになる。
よって、武術初心者にとっては「得意技を身につける」ことが勝利への道の第一歩

得意技を身につけると「勝利への自信」が生まれ、それが試合の緊張を和らげることに繋がる。
だが、得意技ばかりに頼り過ぎると敗北への道を歩むことになる

得意技は、いつか必ず対策を取られることになると心得て、さらにその得意技を磨きつつ、対策への対策という戦術を組み立てることが勝利への道になる。

目指すべきは無意識の境地から繰り出される変幻自在な攻防(闘い)。

攻防編4

『常に変化のある戦いを心得よ。同じ攻撃、同じ防御ばかりを繰り返すな。ワンパターンの攻撃はどんなに優れていても、いつか必ず破れる! しかし、変幻自在に技を変化させれば、主導権は必ずこちらに傾く!』

押忍!

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