『攻防編10 ~「動」と「静」をあわせ持つ者は最強となる!~』
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勝利の秘訣【攻防編】10

『「動」と「静」をあわせ持つ者は強者である。素早く動き、力強く闘う激しさの「動」。気迫という名のオーラを放ち、攻撃の一瞬を狙い澄ました静けさの「静」。相反する二つを使い分けろ!』

【解説】

今回は武術で重要な「攻防」に関する話題を取り上げます。
おそらくこうしたことを主張するのは現代の武道家では珍しいと思います。

《武術とは「攻防戦」》

「攻防」とは、文字通り「攻め」と「防ぎ(守り)」です。
限られた時間制限の中で勝利をつかむためには「攻め」に重点が置かれがちな現代の試合形式(武道、格闘技の試合)ですが、武術本来の視点からすれば、「静」と「動」の両方が必要なのです。

そうした理由から、現代の武術事情(武道、格闘技)は、「攻める方法」ばかり考え、「攻める技」ばかり練習するようになっています。

もちろん相手を倒してなんぼの技術ですから、倒す技を練習することは必須です。
しかし、「倒すために防御する」「倒されないために防御する」という観点が薄いのが現代の武術事情であることは間違いありません。

実際は、練習のほとんどを「攻め技」に費やしている選手がほとんどだと思います。
それは「試合武術」「試合武道」になっているのです。
本来の空手などの武術(武道)は、防御に重点が置かれ、防御からの反撃(攻撃)という「護身」の意味が強かったのです。

ただ、格闘技のボクシングなどは高度な防御技術があります。
しかし、空手の試合では、防御を考えて闘っている選手は稀にしかいません。

ですから、もし、「防御からの攻撃」という「技」を人の数倍練習している人がいるならば、異質であり、勝利する確率がグッと上がると言えるでしょう。

なぜならば、ほとんどの選手がそうしたタイプの選手に慣れていないし、そういったタイプの選手の対応策がないからです。

ただ、問題は「試合時間」です。
通常、空手などの試合時間は3分(女子は2分)が多いでしょう。
その短い時間の中で防御ばかりしていると負けないまでも勝利が遠ざかってしまいます。
ですが、そこに見落としている武術理論、欠けている技術が発生してしまうのです。

《武術における「動」とは?》

武術における「動」とは何か?

そのほとんどは「攻め」と重なりますが、それだけではありません。
「動」を別な表現でいうと「素早く動く」「力強い技」「激しい攻め」、あるいは「変幻自在に変化する戦い方」と言えるでしょう。

素早い動きは攻めだけではありません。
素早くステップを踏んで敵の攻撃をかわすこと(=防御)も「素早さ」です。
「素早さ」は攻撃においても防御においても重要なのです。

「動」の主な意味は「連続攻撃」に集約できるでしょう。
相手が息つく暇もなく攻撃をし続けることで防御不可能にして倒す。
それが「動」の神髄とも言えます。

また、「変幻自在に戦法を変える」というのも「動」と呼べるでしょう。
相手が対策を考え出す前に戦いの戦術を変化させることによって、こちらの「動」に翻弄されてしまうわけです。

つまり、「動」とは攻め(攻撃)に主体を置きながらも防御にも関係しているのです。

《武術における「静」とは?》

武術における「静」とは何か?

攻防戦における「静」とは、いくつかの意味があります。

「静」=罠をしかける静けさ(誘いの静けさ)

これは相手の攻撃を誘ってカウンター攻撃をするために、あえて動き回らずに「待つ」ということです。
相手の攻撃(動き)を誘う意味での「静」です。

「静」=相手のリズムやタイミングを崩し、惑わせるための「静」

いつも同じタイミング、いつも同じリズムの攻撃をしていると、相手にそれを読まれ、逆手に取られてしまいます。
ですから、戦上手はそれをあえて崩します。
つまり、相手を惑わせるための「静」です。
相手の攻めるタイミングとリズムを狂わせるためにあえてじっと構えて動かない瞬間を作り出す、ということです。

「静」=攻撃の好機を捉えるための「静」

攻撃のための「静」です。
これはカウンター攻撃の場合とこちらから仕掛ける攻撃の両方の場合があります。
共通することは、「攻撃の一瞬」を逃さないためにあえて「静」の態勢に入るということです。
猫科の肉食獣が獲物を狙って身を隠している状態とでもいいましょうか。
つまり、全身全霊で攻撃のチャンスを狙っている状態という意味での「静」があるのです。

「静」=体力の回復

試合においてわずかな間動きがないときがあります。
それは激しい攻防戦をした後に息切れし、体力が消耗しきってしまうときがあるので、あえて動かないことで体力の回復を図ることがあります。
そのときも表面上は攻撃するような素振りであることが必須であることは言うまでもありません。
相手に休んでいると思われてはいけません。

しかし、「静」において重要なことは、単純にじっとしているのではないことです。
必須なのは「闘気」「気迫」です。
「静」の状態は体力の回復時においてであってでも、気を抜いてはいけません。
オーラを放っていることが大切です。
「静」は気が抜けた状態ではないということです。

《「動」は「静」に通じ、「静」は「動」に転じる》

「動」は主に攻撃であり、「静」は防御または攻撃準備と言えます。
この2つは武術の両輪です。

ですから試合に勝つために攻撃しか考えずに、攻撃技だけの練習をしてはいけません。
練習時から攻撃しか頭にない人は、隙も出来ますし、相手の攻撃をかわして反撃する技術も身につかないからです。
そういった意味ではボクシングとは攻防一体の技術が高度なレベルで存在している格闘技と言えるでしょう。
本来、空手や拳法でもそうでなければならないのです。
それを現代の空手家、拳法家は思い出さねばなりません。

攻撃するということは、相手の攻撃をかわしつつ、こちらの攻撃を入れるということであり、そこには防御の意味が入っているのです。

相手に攻撃させないという意味での防御、相手の攻撃を無力化するという意味での防御、相手を惑わせて攻撃を狂わせるという意味での防御は、実は攻撃そのものに通じていくのです。

「動」は「静」に通じ、「静」は「動」に転じていくものなのです。

「動」と「静」を使い分け、相手の攻撃力を半減させ、相手を惑わせることは見えない防御の力なのです。
つまり、「静」とは「見えない=動かない攻撃」なのです。
「静」と「動」の両者をあわせ持つ者こそ最強の武術家となり得るのです。

その実例は、ブルースリーの武術(ジークンドー)や師匠のイップマンの闘い方だと言えばわかりやすいでしょうか。
攻防とは一体のものなのです。
攻撃しか考えない者は、より攻撃力のある者に必ず敗れる宿命を負っているのです。
しかし、防御という相手の攻撃を無力化できる技術を持つものは、自分の攻撃力を本来よりも数倍に引き上げることが可能となるのです。
そうしたことに武術の奥義があるのです。

《まとめ》

「攻防」とは、「攻め」と「防ぎ(守り)」。
戦いには「静」と「動」の両方が必要。
「倒すために防御する」「倒されないために防御する」という観点が薄いのが現代の武術事情。

「動」とは「素早く動く」「力強い技」「激しい攻め」「変幻自在に変化する戦い方」。
「素早さ」は攻撃においても防御においても重要。
相手が対策を考え出す前に戦いの戦術を変化させることによって、こちらの「動」に翻弄させる。
「動」の主な意味は「連続攻撃」
相手が息つく暇もなく攻撃をし続けることで防御不可能にして倒す。

「静」=罠をしかける静けさ(誘いの静けさ)。
(相手の攻撃(動き)を誘う意味での「静」)
「静」=相手のリズムやタイミングを崩し、惑わせるための「静」
(相手の攻めるタイミングとリズムを狂わせるためにあえてじっと構えて動かない瞬間を作り出す)
「静」=攻撃の好機を捉えるための「静」。
(攻撃の一瞬を逃さないためにあえて「静」の態勢に入る)
「静」=体力の回復。
(表面上は攻撃するような素振りであることが必須)
「静」においても「闘気」「気迫」は必須。

「動」は主に攻撃であり、「静」は防御または攻撃準備。
この2つは武術の両輪。
「動」は「静」に通じ、「静」は「動」に転じていくもの。
「静」とは「見えない=動かない攻撃」。
「静」と「動」の両者をあわせ持つ者こそ最強の武術家となり得る。

攻防編10

『「動」と「静」をあわせ持つ者は強者である。素早く動き、力強く闘う激しさの「動」。気迫という名のオーラを放ち、攻撃の一瞬を狙い澄ました静けさの「静」。相反する二つを使い分けろ!』

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