『技術編2 ~初手を制する者は勝利を近づける!~』
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勝利の秘訣【技術編】2

『戦いのすべてにおいて重要なのは初手(第一打)である。的確で最適な技を素早く繰り出せ!』

【解説】

《勝利を導くのは初手(第一打)》

武道や格闘技には、さまざまな流派があり、さまざまな試合形式があります。
その攻撃(戦い)の様子を大きく分けると「連打」「単発気味」の二つとなります。

「連打」は主にノックアウト制ルールで見られる戦い方で、「単発気味」は主にポイント制ルールで見られる戦い方です。
この二つのルールの違いは、当然ながら戦い方(攻撃の出し方)に大きな違いを生みます。
ですが、共通していることがあります。

それは「初手」、つまり第一打(初めの攻撃)が突破口を開いたり、相手の態勢を崩したり、相手にダメージを与えたり、相手の攻撃を防いだりすることで勝利を導くことです。

逆に、いい加減に初手(第一打)を出したり、意味の無い初手を出したり、相手の予測通りの初手をだしたりすると、相手に反撃あるいはポイントを取られることに繋がります。

要するに、武術において勝負を決める重要なことは「初手(第一打)」なのです。
相手をノックアウトする決定打でなくても、ポイントを取れる攻撃ではなくても、初手は戦いにおいて勝利を分ける分岐点となる重要なものなのです。
初手をいい加減に繰り出す初心者は、上級者にその攻撃を読まれ、隙をつかれて反撃をくらいます。
なぜ、上手く攻撃できないのか? 
なぜ、いつも反撃されてしまうのか?
なぜ、自分の攻撃が当たらないのか?
という答えが「初手(第一打)」にあるのです。

《初手(第一打)は素早く、的確な技であることが求められる》

戦いにおいて大事なことは「初手」にあると言いましたが、ではどんな技から入ったらいいのかということは、その武道、その格闘技における試合ルールによって違いがあるので、「これだ!」という技をここでは示しません。

ですが、初手で大事なことは「スピード」「目的ある的確に選別された技の種類」です。
初手の意味するものは「決定打」ではないが、「決定打を決めるための攻撃」または「相手の防御を崩し、隙を作るための攻撃」ということです。

基本的に互いに武術、格闘技を身に付けた者同士の戦いにおいて、初手(第一打)で勝負が決まることはほとんどありません。
(一部のポイント制ルールの試合を除く)

重要なことは「初手に意味を持たせること」です。

なんとなく第一打を出したり、いつも同じ技(攻撃)から入っていくというようなことは避けなければなりません。
なぜなら、相手にこちらの攻撃を読まれ反撃されるからです。
また、カウンターの得意な相手は、あなたの意味の無い初手を狙っているからです。
初手を全力で繰り出すことを否定はしませんが、初手は当たらない、避けられる、反撃される、という認識の上に立ち、そのときの勝利の方程式を描いて戦うことです。

《初手の意味(意図)》

初手を意味もなく繰り出して攻撃し続けるうちに調子を掴もう、などと考えてはいけません。
初手をいつも同じ技から始めてはいけません。
初手を「初手単独の攻撃」としてはいけません。
初手には必ず意味(意図)を持たせなければいけません。

〈フェイント〉

初手の意味(意図)のひとつは、「フェイント」です。
フェイントとは、相手の攻撃するタイミングを潰す、相手のリズムを崩す、相手が入ってこないように防御線を張る、相手との間合いを制御するときに使用する、という技です。

重要なフェイントは、こちらが攻撃すると見せかけて相手を騙すことです。
そのことで相手は攻撃のタイミングを失います。
また、攻撃から防御態勢に切り替わります。

孫子には「兵は詭道なり」とあります。
「詭道」とは、騙し合いという意味です。
「フェイント」の技を身につけることなく勝利しつづけることは無理と言っていいくらい、重要な技です。

〈崩し〉

「崩し」は、初手によって相手の態勢または防御“崩すこと”です。
「崩し」は、どちらかというとノックダウン制のルールに比重があります。
(ポイント制ルールでも、有効です)

初手、二手と攻撃をすることで相手の態勢を崩し、相手が防ぎきれないような状況を作り出して、決定打を決めるための手法です。
一発目(初手)から一本や技有りを取ろうとするのではなく、相手の態勢を崩してから得意技を決めるというものです。

〈情報収集〉

初手は「情報収集」としても使用します。
例えば「左ジャブ」「左の順突き」を繰り出すと、相手はどんな反応をするのか、ということを試すのです。
そうした相手の反応(こちらの攻撃に対する)を頭の中に入れた上で繰り出すべき技と繰り出すべき攻撃パターンを組み立てるのです。
これはジークンドーを創設したブルースリーが主張していたことです。

要するに相手の反応(主に防御)を調べるために初手を繰り出してみる。
初手を相手の反応を調べるための情報収集に使う、ということです。

プロボクサーは必ずラウンドを進めるうちに相手の反応、攻撃の癖、攻撃パターン、得意技、などを情報収集し、分析しながら作戦を瞬時に組み立てます。
ただし、試合時間が3分のみの場合は、これを多用すると時間切れとなり、勝利を掴めなくなるので、あなたの所属する団体のルールに合わせて考えてください。

〈捨て技〉

一発で決められないとしたら初手(第一打)をどう使うべきか、という答えが「捨て技」として使う、ということになります。
「捨て技」とは、相手が反応する、相手が防御する、相手が避ける、ということを想定し、それを承知の上で技を繰り出すということです。
なぜか?
つまり、一打目、または二打目を相手に反応させておいて、そこに生まれた隙をついて有効打(決定打)を放つというために使用する、ということです。

突破口を開くための犠牲技と言ったらいいでしょうか。
あえて有効打とならなくてもいい、決定打とならなくてもいい、と思って繰り出す技が捨て技です。
捨て技自体は有効打とならなくても、それが有効打につながるためのものにする、ということです。

フェイントとの違いは、フェイントは動きそのものがフェイント(騙し)になりますが、「捨て技」は、相手が本気の攻撃を仕掛けてきたと思わなければ意味がないため、捨て技がヒットすれば有効打となるものでなければならないことです。
軽く出す技や中途半端に攻撃に見せかける技や動きはフェイントであり、本気の攻撃だけどその後に隠した意図を持つ有効打につなげる技が捨て技です。
捨て技はある程度本気で出さなければ捨て技となりません。

捨て技とは最終的に有効打(決定打)を導き出すための連続攻撃における騙し技なのです。
捨て技とは高度な騙し戦術なのです。

《まとめ》

初手を使いこなすようになれば武術者としては一人前といえるでしょう。
初手が有効に働くならば、勝利を生み出すことになるでしょう。

初手によって、相手の反応を見て、有効な攻撃技、有効な攻撃パターンを導き出す。
初手によって、相手を騙し、相手の攻撃のタイミングを潰し、相手との間合いを制御する。
初手によって、有効打または決定打を決めるための突破口とする。

初手に意図を持たせ、その意図を相手に読まれないことが重要。
初手の意図の裏に二重、三重に意図を隠し、相手を翻弄し、こちらのペースに引きづり込み、攻撃する隙を作り出すことができたら、勝利はあなたの手のうちに転がり込むだろう。

技術編2

『戦いのすべてにおいて重要なのは初手(第一打)である。的確で最適な技を素早く繰り出せ!』

押忍!

『技術編3 ~連続攻撃によって相手の隙を作り出せ!~』

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