『心得8 ~技で劣るとも、気迫で負けるな!~』
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心得8

『技に劣るとも、経験に劣るとも、気迫において勝れ!
気迫を出せ! 気迫を込めろ! 捨て身でいけ!
気迫、気迫、気迫だ!』

【解説】

《はじめに》

今回の「心得」は、学生の方を中心層とした話です。
もちろん、それ以外の人にも該当することが多い話でもあります。

《武術における勝敗(優劣)の要因とは?》

武道、格闘技などにおいて一般的に言うと、勝つか負けるかという勝敗、どちらが強いか(上手いか)を決めるものは、やはり一に身体能力であり、大きな差がでるのが経験の差(修練の期間)であることは異論がないでしょう。

経験の差とは、武道、格闘技の鍛錬の期間(時間)の長さです。
この差はやがて縮んでいきますが、どうしても数十年の鍛錬を積んできた者と黒帯以前の者、黒帯を取ったばかりの者の差は瞭然たるものがあります。

学生の空手部、学生の拳法部などでは1年の差が天と地ほどもある場合があります。
(それ以前に武道を習得していない場合の話)

もちろん、年齢とともに体力が落ち、反射神経も鈍ります。
だから、武術者も運動選手としての宿命は当然追っています。
(学生時代は関係ない。むしろ体力がついているかいないかが大きく関係する)

ですが、武術が他のスポーツと決定的に違うのは、修練すればするほど、期間が長ければ長いほど「技が磨かれる」ということです。

ですから、大学に入って空手を身につけても3年生、4年生と組手(試合)をすれば“コテンパン”にやられてしまいます。
稀に運動能力の高い人は先輩と互角に渡り合える人もいますが、そうした人は例外と呼べるでしょう。

何が言いたいのかと言うと、大学の空手等の武道の試合では、先輩選手と対戦しても勝てることは非常に少ない、ということです。
それは経験の差が「実力の差」となっているからです。

《上級者となると実力の差は縮んでいく》

ところが5年以上武道を修練すると、先輩であっても互角に渡り合えるようになります。
10年もやっていれば先輩後輩の差がどこにあるかわからなくなります。
この場合の「差がない」とは、練習風景や“技の熟練度”という意味です。

ただ、問題は1年、2年という時間(期間)の中で、どのような課題に取り組んできたのか、どんな練習をしてきたのか、ということにおいて試合における実力差は発生します。
欠点をいかに克服し、長所をいかに増やしたのか、ということ。
負ける要因をいかに潰し、勝つための技術をいかに磨いたのか、ということ。
これらを常に考えに考えて技を修練するかしないかで、実際の試合(組手)では差が出てきます。

重要なことは、ある程度の期間においては、「身体能力の違い」「運動神経の差」などはあまり関係なくなる、という現象が上級者の間では起こることです。
これは武道初心者の間では、運動神経が良い人の方が技の習得が早く、試合でも勝つことが多いのとまったく違った現象が起きてきます。
ですから、武道(武術)は、出来るだけ生涯つづけた方が良いのです。

修練次第では、運動神経の悪い者が運動神経の良い人より強くなることが他のスポーツではないほど違いがでるのです。
武道って、面白くないですか?

《経験の差を埋めるものは「気迫」しかない》

学生の空手部で空手を修練し、このブログを読んでいる方もいるでしょう。
(いるか?)
今回は特にそうした方向けにアドバイスをします。

大学生または高校生となって初めて空手や拳法を習ったのならば、先輩にかなうはずがありません。
その時期の1年は大きな経験の差です。

「経験の差」は「実力の差」を意味します。

「それでも先輩に負けたくない」と思いませんか?
負けず嫌いですね!
でも、それでこそ求道者です。

はっきり言いましょう、先輩との経験の差は簡単には埋まりません。
先輩の練習時間の2倍以上を毎日行っていたら追いつくのは早いかもしれませんが、その先輩の練習量が多ければ2倍どころか同じ練習量もこなせないかもしれません。
悔しいですね!

正直、習いたて、特に黒帯前の選手が黒帯の先輩に勝つことは至難の業としか言いようがありません。
でも、そんな方にアドバイスがあります。

それでも「気持ちで負けるな!」ということです。
はじめから「先輩には勝てない」「勝てないから気迫がでない」となるのが普通でしょう。
しかし、技において劣るなら、経験値において劣るなら、「気迫において上回れ!」「気迫だけは負けるな!」と言っておきます。
それがあればいつか先輩を追い越すことができます。

しかし、妥協し、勝とうとする気力を発揮しない者はいつまで経ってもウダツが上がりません。
それでも「勝ちたい」と思うかどうかが強くなるかどうかを決定づけるのです。

「心技体」の言葉はダテではありません。
武道は、まず「心」なのです。
心で負けたらダメなのです。

技で劣るとも「心が屈していなければ上達も早くなります」
身体能力で劣るとも「心が屈していなければいつの日か勝利することができます」

技や身体能力、経験で劣るとも「気迫」において劣るな!

劣るからこそ「気迫において勝れ!」ということです。
これができる人とできない人は、いつの間にか大きな差となって現れます。

技で優る相手、実力で優る相手と対戦(組手)するということは、必ず「緊張」と「恐怖」をともなうものです。
その「緊張」と「恐怖」に打ち勝つことが必ずあなたを成長させます。

敵は先輩ではなく、自分自身の弱き心だということを自覚してください。
先輩に勝つことよりも、まず自分の弱き心を打ちのめしてください。
それが「気迫において勝れ」ということです。

《まとめ》

一般的に“強さ”を決めるものは、身体能力経験の差(修練の期間)である。
学生空手では、経験の差(期間の差)が「実力の差」となっている。

武術が他のスポーツと決定的に違うのは、修練すればするほど「技が磨かれる」こと。
通常、5年以上武道を修練すると“技の熟練度”があがってきて先輩後輩の差が縮んでいく。
課題や問題意識を持って修練を積んでいく者とそうでない者では、いずれ勝敗(試合)における大きな差となって出てくる。

学生時代の1年の差は大きな経験の差となる。
「経験の差」は「実力の差」となる。
それでも「勝ちたい」と思うかどうかが強くなるかどうかを決定づける。

技において劣るなら、経験値において劣るなら、「気迫において上回れ!」「気迫だけは負けるな!」
武道は、まず「心」。
心で負けたらそれで終わり。
先輩に勝つことよりも、まず自分の弱き心を打ちのめせ!

『心得8』

『技に劣るとも、経験に劣るとも、気迫において勝れ!
気迫を出せ! 気迫を込めろ! 捨て身でいけ!
気迫、気迫、気迫だ!』

押忍!

『心得9 ~「恐れ」と「油断」は敗者への道~』

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