『攻防編8 ~正攻法で対峙し、ときに奇襲し、想定外の動きで相手のリズムを崩せ!~』
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勝利の秘訣【攻防編】8

『相手の不意をつけ。正攻法だけが空手ではない。奇襲攻撃、変化技。ときには相手の想定外の動きや攻撃をしろ!』

【解説】

《戦いにおける2大戦法とは?》

〈正攻法(正々堂々のぶつかり合い)〉

古来より戦い方には「正攻法」と「奇襲」があります。
この2つが兵法の2大形式と言えましょう。
これは個人戦においてもある程度当てはまります。

平易な言葉で言えば、チャンピン(あるいはそれに匹敵する者)などの実力者が単に勝利するのではなく、「どのように勝ったのか?」という戦いにおける「誇り」や「権威」を大切にする戦い方です。

これを武道の試合にあてはめると、常に優勝候補、常にトーナメント上位などの選手が単に勝つだけではなく、試合の中身を大切にする考えです。

具体的に言うならば、「自分よりも身体の小さい相手とずっと距離を取って闘わない」、「フェイントを使わない」、「試合時間後半でポイントで有利な状況で逃げの戦法(時間稼ぎ)を取らない」などです。

そうした戦法も戦法のひとつではあるのですが、正々堂々と戦ったとは言えない余地があります。
特に「逃げ切り戦法」は相手にチャンスを与えないので、そういった戦法を強者が相手に使用するのはズルいと言えばズルい作戦と思われるのです。

要するに、「勝てばいいんだ!」「勝つことが重要で手段は選ばない」というのは真の実力者やチャンピンがやることではない、ということです。
これは武士道精神につながる姿勢です。

違った表現で言えば、小手先の惑わし戦法は使用しないで、誰もが身につけている技で勝負する
だが、その技とは磨きに磨いた技である、ということです。
つまり、同じ技なのに「より磨いた技で勝利する」という戦い方が武道における正攻法なのです。
「正攻法」とは、強者の兵法なのです。

〈奇襲(変化技、想定外の動き)〉

「正攻法」とはある意味真逆の戦い方が「奇襲戦法」「騙し戦術」です。

同じ相撲道で説明すると、小兵で土俵の魔術師と呼ばれた舞の海関の戦い方です。
相撲に限りませんが、武術、格闘技においては身体が大きい、または体重が重い方が勝利するという法則があります。

しかし、一見不利な対格差を逆転させるのが「奇襲戦法」であり「騙し戦術」なのです。
ですから、これは弱者の兵法となります。

自分よりも体格の大きい選手、体重が重い選手と戦う時、または自分よりも実力が上手の選手と戦うには正攻法では不利となります。
ですから正攻法で対峙しつつも、「奇襲」や「騙し」を使用して試合を有利に運ぶのです。

この正攻法と奇襲は、どちらかが「善」でどちらかが「悪」というものではありません。
大戦相手との想定的状況の中で生まれてくるものです。

自分よりも体格が大きい選手、自分よりも実力がある選手と戦うためには正攻法では負けてしまう確率が高くなるということです。
それを跳ね返すために「奇襲」「騙し」を使用する必要があるのです。

これは絶対的状況ではなく、相対的状況なので、対戦相手をその都度分析し、判断することです。

《勝利の秘訣はタイミング》

要は、攻防における重要点は、「相手の不意をつく」ということです。

これが出来れば「相手の反応が半歩遅れる」「対応が出来ない」等となり、技=攻撃が成功する可能性がぐっと高まります。

肝心なことは、お互い練習に練習を重ねてきた猛者なので、そう簡単には隙を見せないことです。
むしろこちらに全神経を集中してこちらの動きを注視しているのです。
そんな中で相手を騙すとか奇襲とかは非常に高度な技術なのです。
ですが、武術初心者だから関係ないと思ったら、永遠にそういった動きは身につきません。
基本練習はみっちり行わねばなりませんが、初心者の内からそういった弱者の兵法を常に模索することが将来の勝利につながります。
高度な技術であるからこそ、初心者の内から取り組み必要があるのです。
有段者になれば自然に身につくものではなく、身につけようと意識的に励んだ者だけが身につくものなのです。

話を戻すと、「不意をつく」とは、「絶妙のタイミングで攻撃する」ということです。
そのためには相手と同じ動きではなく、「変則的な動き」や「独特な動き」をすることです。
それによって相手に「迷い」を生じさせます。
その一瞬の迷いが隙を生み出します。
そのタイミングで攻撃することです。
それが「奇襲」「騙し」の意味です。

ですから自分の個性、体格、身体能力にあった独特の動きや変則的な応用技を生み出すことです。
それによって不利な状況を打破することです。

排すべきは「いつも同じ技を使う」「同じ技や攻撃の繰り返し」です。
戦い方の理想とは「変幻自在」「臨機応変」であることを忘れてはいけません。

《まとめ》

戦い方には「正攻法」「奇襲」がある。

体格で優る、実力で優る人が、「卑怯な手を使わない」「姑息な手は使わない」「騙し戦法を使わない」というのが「強者の兵法=正攻法」です。
体格で劣る、実力で劣る人が、「想定外の動きをする」「基本にない独特の動きをする」というのが「弱者の兵法=奇襲」です。

「強者の兵法=正攻法」は、変化技、アレンジ技で対決するのではなく相手と同じ技でありながら、相手より「より磨き抜いた技」で勝利するもの。
「弱者の兵法=奇襲」は、一見不利な条件を逆転させるための勝利の糸口をつかむもの。

正攻法と奇襲は、どちらかが「善」でどちらかが「悪」というものではない。
大戦相手との想定的状況の中で「正攻法」と「奇襲作戦」は常に入れ替わる。

攻防における重要点は、「相手の不意をつく」こと。
「不意をつく」とは、「絶妙のタイミングで攻撃する」こと。
そのために「変則的な動き」や「独特な動き」をすること。
自分の個性、体格、身体能力にあった独特の動きや変則的な応用技を生み出すこと。

排すべきは「いつも同じ技を使う」「同じ技や攻撃を繰り返す」
戦い方の理想とは「変幻自在」「臨機応変」

攻防編8

『相手の不意をつけ。正攻法だけが空手ではない。奇襲攻撃、変化技。ときには相手の想定外の動きや攻撃をしろ!』

押忍!

『攻防編9 ~追い込まれてもチャンスを見つける!~』

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