『心得10 ~武の道とは「心技体」の順番で大切~』
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心得10

『力よりも極められた技、技よりも挫けない精神がより大切。心技体、一番大切なのは精神(心)』

【解説】

《体格差は“力”なり》

武術や格闘技をやる人たちに共通する要素は「強くなりたい」でしょう。
それはある種の「ヒーロー願望」でもあります。
「ヒーローは強いもの」、それを象徴するのが“力”だと思います。

武術や格闘技の場合、「パワー」と呼ぶべきものでしょうか。
やはり、闘うという要素がある以上、体格は武器(有利)となります。
大きな体、背丈の高い体、重い体重は、それに劣る相手に有利となります。
ですから、体格的な有利を示す要素は「力=パワー」でもあります。

そもそも武術や格闘技は体を鍛えるものですから、筋肉を主体とした力を生み出す肉体は必須です。
しかし、単にパワーがあるだけでは相手に勝てません。

体格的に劣っていても勝てる要素があります。
それが「技」です。
体が小さい選手は、その特徴を生かした技を習得することによって、体格差に勝る相手に勝つ(倒す)ことができます。
その要素こそ、「技」なのです。

ですから、武術や格闘技には「肉体的な力=パワー」が必須ですが、パワーより勝るものは「技」なのです。
なぜならば、肉体による力=パワーは年齢とともに衰えるからです。
しかし、鍛え抜かれた技、極められた技そのものは衰えません。
むしろ光を増します。
卓越した技は衰えを見せるどころか、無意識の領域に達し、その人の表面意識で動かさなくても動く「魔法のような動き」となります。
いわゆる「身体が勝手に動く境地」です。

そこまでいった技は体に染みついているので、技そのものがひとつの生き物のように存在しています。
要するに、「肉体的な力=パワーよりも、極められた技を重視せよ」ということです。

日々の練習(鍛錬)とは、技を極めるためにあるのです。
その技を極めるために肉体の筋肉や柔軟性が必要なのです。
力より極められた技が武術者、格闘技者には大切なのです。

《パワーよりも極められた技がより重要》

技を極めれば武術者、格闘技者としてそれでいいのか?
というと、そうではありません。
武術者、格闘技者の最終地点はそこではありません。
武術者、格闘技者が目的(最終地点)とするべきは、「肉体的パワー」と「極められた技」を作り出しながら、その奥にある「武の精神(心)」を鍛えることです。

「武の精神(心)」とは、なんでしょうか?
武術者及び格闘技者にとっての「武の精神(心)」とは、まず「礼儀の心」を身につけることです。
「礼の心」は、師や仲間への感謝を生み出し、対戦する選手への敬意として現れます。

さらに「武の精神」として「チャレンジする精神(心)」と「諦めない精神(心)」を磨くことです。

体格的に自分は劣っているから対戦相手に勝てないと初めから諦めるならば試合になど出場しないほうがいいでしょう。
相手が自分よりも経験がうえ(先輩など)だから、負けて当然と考えるならば、試合に出る意味はないでしょう。
常に上を目指す、常に自分よりもより強い相手と闘うことを喜びとする、そうした境地を目指すべきです。
それが武の精神におけるチャレンジ精神です。

武術や格闘技の練習は辛いものです。
試合も苦しいものです。
その苦しみを耐え抜く精神、勝利を諦めない精神こそ武術者の真の目的です。
すべてはその精神を身につけるためにあるといっても過言ではありません。

強い精神(心)を生み出すために技を磨き、体を鍛えている、そう思うことです。
すべては強い心、苦しみにも耐え抜き勝利を導く精神、弱きを助け悪を挫く精神、強さが裏返しである優しさを身につけることが武術者、格闘技者の目的であるということです。

《武の道は心技体の順番が大切》

武の道(武術者が歩む道)は、『心技体』の順番で大切なのです。

肉体的な力よりも、極められた技が大切。
極められた技よりも、何事にも挫けない精神を求める。
そこに武術者としての道があるのです。

礼節なく、心を置き忘れた力を誇示するだけの武術は邪道です。
武の道とは、「己の心を高次な輝きを身につけるための道」であり、「他者を助ける利他の道」のためにあるものなのです。

《まとめ》

武術者、格闘技者に共通する要素は「強くなりたい」=「ヒーロー願望」。
「ヒーロー願望」を象徴するのが“力”
体格的な有利を示す要素は「力=パワー」。
筋肉を主体とした闘うための肉体(力を生み出す肉体)は必須。
体格的に劣る者が勝つ要素=「技」
パワーより勝るものは「技」。
よって、「肉体的な力=パワーよりも、極められた技」を重視する。

武術者、格闘技者の目的(最終地点)は、「武の精神(心)」を鍛えること。
武の精神とは、「礼儀の心」「チャレンジする精神(心)」「諦めない精神(心)」。
すべては強い心、苦しみにも耐え抜き勝利を導く精神、弱きを助け悪を挫く精神、強さが裏返しである優しさを身につけることが武術者、格闘技者の目的

武の道とは、『心技体』の順番で大切。
礼節なく、心を置き忘れた力を誇示するだけの武術は邪道。
武の道とは、「己の心を高次な輝きを身につけるための道」「他者を助ける利他の道」。

『心得10』

『力よりも極められた技、技よりも挫けない精神がより大切。心技体、一番大切なのは精神(心)』

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『心得11 ~気迫は「覚悟する者」にだけ与えられる精神力!~』

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