『攻防編12 ~防御の得意な者は敗れることはない!~』
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勝利の秘訣【攻防編】12

『ステップを踏め。相手の攻撃を流せ。フットワーク防御で相手の攻撃を華麗にかわせ。防御の得意なものは決して敗れることはない』

【解説】

《伝統空手にステップはない》

今回のテーマは「ステップによる防御」です。
しかし、ステップとは伝統空手にはありません。
ですが、東京五輪の競技となった「ライトコンタクト空手=伝統空手」の組手の試合では、選手はみなステップをふんでいるじゃないか?
と指摘される方がいるかもしれませんが、あれは伝統空手の技(動き)ではありません。

元々は海外の選手から発生したものが全世界の選手に普及したものです。
海外と日本を比べてみると、海外ではテコンドーのほうが空手より普及しているのです。
テコンドーは「足のボクシング」と言われるように“足技の武道”です。
その動きはステップからの攻撃や防御が主体です。
つまり、海外の選手はテコンドーを経験している、またはテコンドーの影響を受けている選手が多く、そうした影響が日本の空手界に変化をもたらした、ということです。
もう一つはボクシングのステップの一部を空手界が取り入れたということです。

《ステップをなぜ使うのか?》

では、なぜライトコンタクト空手(=伝統空手)の選手(組手)がステップをふんで闘っているのでしょうか?
その理由は、「速さ」です。
ライトコンタクト空手のルールはポイント制なので、どちらが先に攻撃を加えたのかということが試合の勝敗を決するからです。

ステップをふむことで素早く攻撃と防御に入れるからです。
また、相手に対して攪乱する要素も入っているからです。

ステップをふむことの効能はまだあります。
それは「リズム」を作れることです。
武術にはリズム感が大切です。
リズム感は「攻撃の連環」「タイミングを生み出す」という効果があります。
つまり、リズム感がないと連打攻撃が上手く機能しない、攻撃するタイミングを上手くつかめないのです。
ですから、リズムオンチは武術オンチとなります。

《ステップとは攻撃と防御を兼ね備えている武器》

〈ステップは攻撃の発射準備態勢〉

まず、ステップをふむことでリズムを生み出し、いつでも攻撃できる発射体勢を作ることが出来ます。
ステップに求められていることは「ある程度離れた間合いに素早く入り込む」ということです。
間合いの近い格闘技では、あまりステップが多用されないのはこの要因が関係しています。
一方、間合いを離して闘うライトコンタクト空手などの競技では、離れた距離から一気に間合いを詰めて攻撃しなければなりません。
そこには「素早く距離を縮める」ことが必須となります。
ですから、どっしりと地面に足をつけた状態から攻撃に入るのではなく、ステップから相手の間合いに入るのです。
そして、一気に間合いを詰めるということは「勢いがつく」ということに繋がります。

これはどちらが先に攻撃を加えたのか、というポイント制ルールの武道では重要な要素なのです。
ノックダウン制の格闘技では、相手から攻撃をもらっても耐えて打ち返して相手を倒せば勝利できますが、ポイント制ルールでは先に攻撃をくらった方が負けとなります。
ですから「速さ」が必須なのです。

ステップを使うことによって「離れた間合いを一気に詰めて、勢いよく相手に攻撃できる」のです。
つまり、ステップは「攻撃(発射)の準備体勢」なのです。

〈ステップは防御の王道〉

空手にはさまざなな防御法があります。
「受け」「捌き」「流し」などです。
ですが、近年の空手界、特にライトコンタクト(伝統空手)の試合では、受けも捌きも見ることは100%といっていいほどありません。
では、どうやって防御しているのかというと、ステップによる身体ごとの防御なのです。
腕などで相手の攻撃(技)を受けたり流したりするのではなく、体ごと相手の攻撃をかわしているのです。
つまり、相手の攻撃ポイントに対し、体全体を移動させることで自分の体勢を崩さずに防御しているのです。
さらにそれはすぐさま反撃に出られる体勢でもあるのです。
体ごと移動させることで防御しつつ、素早く反撃にでる動きであるということです。
それがステップによる攻防の動きです。

《真の強者は防御が鉄壁》

武術において基本は「防御」です。

格闘技でも強い選手、勝ち続ける選手はおしなべてみな防御技術に優れています。
逆に言うと、防御技術に優れていなければ勝ち続けることは出来ないのです。

短い制限時間の中でポイントを取ったり相手をダウンさせる試合では、どうしても攻撃に意識がいきますが、攻撃だけに意識がいってしまったり、防御を考えない闘い方は敗北を導き出します。

武術初心者の方に覚えておいてもらいことは、「防御の得意なものは決して敗れることはない」ということです。
なぜなら攻防とは攻撃と防御が一体のものだからです。
攻撃と防御はコインの裏と表だからです。
「攻撃即防御」であり、「防御即攻撃」だからです。
それが武術の姿なのです。

ですから、攻撃だけを練習するのではなく、試合で攻撃だけをするのではなく、防御を考え、防御しつつ反撃する技術を磨く必要があるのです。
そのために有効な技術(技)がステップなのです。

《まとめ》

「速さ」を求められる武道(格闘技)ではステップによる攻防が有効となる。
ステップをふむことで素早く攻撃と防御に入れる。
ステップをふむことで「リズム」を作れる。
武術におけるリズム感は「攻撃の連環」「有効なタイミングをつかむ」という効果を生み出す。

ある程度離れた間合いに素早く入り込むためにはステップが有効となる。
ステップの最大の効能は、「素早く距離を縮める」または「素早く距離を引き離す」。
ステップは「攻撃(発射)の準備体勢」。

ステップによる防御とは「体ごと相手の攻撃をかわす」こと。
ステップ=「体ごと移動させて防御しつつ、素早く反撃にでる動き」

武術において基本は「防御」。
防御技術に優れていなければ勝ち続けることは出来ない。
「防御の得意なものは決して敗れることはない」
攻撃と防御はコインの裏と表。
「攻撃即防御」「防御即攻撃」

攻防編12

『ステップを踏め。相手の攻撃を流せ。フットワーク防御で相手の攻撃を華麗にかわせ。防御の得意なものは決して敗れることはない』

押忍!

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