『勝負編2 ~まず、心理戦に勝利する!~』
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勝利の秘訣【勝負編】2

『実際の戦闘の前にも後にも心理戦があると心得よ! 戦闘中は相手の心理を読め。戦いの一手先を読め! 技で戦う前に心理戦で勝利しろ!』

【解説】

《試合前の心理戦》

初めての試合、緊張するものです。
武術初心者の方は、試合に出場するだけで緊張してしまい頭の中が真っ白になって実力を発揮できないまま試合が終わってしまった、という方も多いでしょう。

試合の緊張に関しては別の【試合編】で論じますが、武術初心者が心がけなければいけないことがあります。
それは、「試合とは、試合中の限られた試合時間だけではない」ということです。
試合会場に一歩足を踏み入れた瞬間から「試合はすでに始まっている」のです。

同じ流派の試合の場合、さまざまな場所の道場から選手が参加していると思います。
普段は、同じ道場の選手しか見たことがない武術初心者が、別の道場の選手を見ることで緊張感が膨れ上がります。
そのときにおしなべて思うことは「どの選手も自分より強く見える」でしょう。
そうでなくても「どれだけ強いか分からない」でしょう。
そのことで緊張感がより増すのです。

人間は、「知らない」ことに「恐怖」を感じるのです。
そのことを武術初心者は知ることです。
実際は、知らない選手、初めて見た選手と同じ試合会場で会うことで、「俺の方が強い」と思う人の方が少ないでしょう。
要するに、武術初心者の方は、試合前にすでに試合の空気と知らない対戦相手に飲み込まれてしまうのです。
ここに注意する必要があります。

適度な緊張は必要ですが、緊張し過ぎ、または自信の喪失は本来の実力を半減させ、試合の結果(勝負の結果)を悪くします。
こうしたことが武術初心者の方が、どうしても通らねばならない関門なのです。

具体的に言うと、他の道場の選手の姿を見るだけで「恐れる」、準備体操や技の練習をしている他の選手を見ると「強そうだ」と思ってしまう、ということが往々にしてあります。

それが意味することは試合前の心理戦に負けていることになるのです。
(または劣勢に立たされていること)
試合とは試合会場に入った瞬間からすでに始まっていると思って、そこで「精神的戦闘態勢」に入る必要があるのです。
実際に、試合の順番が来て「始め!」の合図で初めて戦闘態勢に入るのでは遅いのです。

要するに「試合の前に心理戦がすでに始まっている」のです。

熟練者の方は、それを心得ていて、試合前から「精神の集中」をします。
ですが、武術初心者の方は、そうした意識が働かず緊張に飲み込まれて実力の半分も発揮できずに終わる方が多いのです。

試合会場に入って自分の試合が始まるまでにすることは以下のことです。

「対戦相手が分っていて、事前情報があれば、対策を考える(考えすぎはいけません)」
「事前情報がなければ対戦相手のことはいっさい“考えない”
「入念に柔軟を行い、コンディションを整える」
「自分が練習してきた試合用の技やコンビネーションなどを繰り返しシュミレーションする」

そのことだけに“全集中する”ことです。

つまり、自分の持っている力を100%発揮できる状態にすることにのみ集中するのです。
集中です!
「周りの雑音」と「心の中の雑念」を遮断するのです!
それが試合前に「試合の空気に飲まれない」「意味もなく対戦相手を怖がらない」という心理戦なのです。
武術初心者の方は、それが非常に大切です。

強気を装っていても心の何処かに「不安」や「対戦相手への恐怖」はあるものです。
不安、恐怖を払拭することが武術初心者の方にとっては大切です。
それが武術初心者の方にとっての試合前の心理戦です。

不思議なこととですが、自分のことに“全集中する”している人は「その人を知らない人から見れば強く見える」のです。

《試合中の心理戦》

武術初心者の方が注意するべき試合中の心理戦は主に2つ。

〈恐れを感じた場合に、悟られないようにする〉

武術初心者の方が一番注意しなければならないことがあります。
対戦相手と相対してみて、「強いな!」と思ったときに「怖い」という気持ちが芽生えてしまいます。
そのときにその「恐怖の感情を相手に覚られない」ことです。
心の変化は、必ず表情や動きに表れます
弱きになっていることを対戦相手が覚ると、相手は俄然強気になって攻めてきます。
つまり、「自分の弱きは相手を調子に乗せてしまう」ということです。
勢いづいた相手はここぞとばかり攻めてきます。
そうすると劣勢に追い込まれてしまいます。
心理戦の敗北は試合結果の敗北につながるのです。

ですから、たとえ攻めあぐねて「不安」に思っても、相手が思いのほか強敵で「恐怖心」を感じても表情や動きに出さない努力が必要です。
強い意思で出さないことです。
逆に、無理をしてでも「強気を装う」のです。
強気を装っていることで相手に不安や戸惑いを起こさせるぐらいでなければいけません。
こうしたことが武術初心者の方の試合中の心理戦のひとつです。

〈攻めるタイミング〉

武術初心者の方が心掛けなければならない試合中の心理戦のもう一つは、「攻める(攻撃する)タイミングに関すること」です。
これは視点が2つあります。

1つは、自分が攻撃しようとするタイミング(瞬間)を相手に覚られないこと。
2つ目は、逆に相手が攻撃してくるタイミング(瞬間)を確実につかむこと。

ともに上級者でも難しいことですが、こうしたことを本当に体感できるのは試合しかありません。
人間の心(心理)と身体(動き)は連動しています。
攻撃しようと思うと、体のどこかにその兆候が表れることが多いのです。
(特に武術初心者の方は)

心理から動きを読むということの裏返しで「動きから心理をよむ」ということもあるのです。
試合中、ポーカーフェイスを装っている選手は多いもの。
顔の表情から心理を読み取ろうとしても、なかなかわかりづらいものです。
ですが、多くの場合「人には癖」があります。
攻撃をするためにフェイントを多く使う、必ず右足から出る、迷っている素振りを見せてカウンターを狙う、静止状態の後から攻撃に移るなど、人によって必ず攻撃するための何らかの予兆があったりすることが多いものです。
その予兆は、つまり「攻撃しようとしている」という相手の心理の表れなのです。
それを読み取ることです。

ですが、これは武術初心者の方が実践することは難しいでしょう。
なぜなら、その「予兆」は、人によって千差万別であり、ほんの一瞬の動きだからです。
しかし、これを試合中に学ばねば学ぶ機会はありません。
相手の心理を読むということは武術初心者の方には難しいことですが、武術の道を歩むならば避けては通れない道です。

そして、上級者になればなるほど、「相手の心理を読む」または「心理戦」が勝敗の結果に大きく影響してくるのです。
なぜなら技そのものや身体能力での「差」は少なくなっているからです。
ですから、心理戦による影響が上級者になればなるほど出てくるのです。
それを習得するのに、上級者になってからでは遅いのです。
ですから、武術初心者の頃から心掛けることが大切なのです。

《心理戦とは、頭脳戦でもある》

結局、試合中の対戦相手の心理を読むということは、相手の動きを知ることであるので、それが意味することは「頭脳戦」なのです。
つまり、相手の心理を読むことが「攻撃方法の模索」や「主導権の奪取」、「作戦の組み立て」になるのです。

武術の試合、特に技や身体能力に差がない場合の勝敗の行方は「作戦の優越」によって決まります
武術初心者の方は、身体能力が優れていれば勝てる、あるいは技が優れていれば勝てる、と思っている方がいますが、それだけではありません。
多くの試合をすればするほど、経験を積み、上級者と相対せば相対すほど、実力が拮抗していることを感じます。
ほんのわずかな差、ほんの一瞬の油断が勝敗を分けることがあります。

ですから、実力が拮抗しているときには、特に相手の心理をよみ、相手の心理を逆利用し、こちらの心理をよまれないようにすることが重要なのです。

《まとめ》

試合会場に一歩足を踏み入れた瞬間から「試合はすでに始まっている」と思うこと。
「周りの雑音」と「心の中の雑念」を遮断して自分のコンディション作りのみに専念すること。

心の変化は、必ず表情や動きに表れるもの。
思わぬ強敵と相対しても「恐怖の感情を出さずに、強気を装う」こと。
攻撃しよう、しようと思っていると動きに表れて相手に読まれてしまうので、攻撃に移る予兆動作を無くすこと。
逆に、相手がいつ攻撃してくるかという心理は、相手の微妙な動きから読み取ること。

勝敗は単なる技の優越や身体能力の差だけではなく、「気持ちの強さ」「心理戦の優越」「頭脳戦の優越」によって勝敗が分れることを肝に命じること。

勝負編2

『実際の戦闘の前にも後にも心理戦があると心得よ! 戦闘中は相手の心理を読め。戦いの一手先を読め! 技で戦う前に心理戦で勝利しろ!』

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『勝負編3 ~「タイミング」こそ、勝負の要!~』

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