勝利の秘訣【勝負編】1
『間合いを制するものが勝利する。戦闘中は相手との距離(間合い)を常に把握しろ! 人によって有効な間合いは違うもの。相手の得意な間合いを外し、または見切り、自分の得意な間合いで勝負しろ!』
【解説】
《試合(勝負)に勝つための必須条件》
武道や格闘技において非常に大切なことがあります。
それは「いかに間合いを制するか」です。
「間合い」とは、別の言葉を使うと「相手との距離」です。
この「間合い」を制する者が勝負に勝利します。
いくらハードパンチャーでも、鋭い蹴りを持っていても、その攻撃が相手にあたらなければ意味がありません。
試合に勝利することはできません。
そして、武道初心者、格闘技初心者はこの「間合い」を意識せずに戦ってしまいます。
俺には「キレのある蹴り」「素早い突き」があるといくら言っても間合いを外されたら当たらないのです。
また、相手の伸びてくる突き(パンチ)や蹴りの射程距離を見誤ると、ポイントを奪われたり、ダメージを受けたりします。
基本練習でカッコよく突きや蹴りをだすことができても、それが相手にあたらなければ「絵に描いた餅」なのです。
基本技を身につけることは、武術のスタートでしかないのです。
武道や格闘技とは、常に相手を想定するものであり、相手と闘う術(すべ)なのですから、技だけではない要素が勝負を分けることになるのです。
それほど、「間合いを制する」ということは重要なことなのです。
「間合いを制する」ことができれば勝利の確率は高くなることは間違いないのです。
では、「間合いを制する」とはなんでしょうか?
間合いとは相手の身長、腕や脚の長さ、踏み込みの速さと距離などから導き出される攻防における有効な距離です。
「間合い」には「防御のための間合い」と「攻撃のための間合い」があります。
(本当は同じ意味を持ちますが、便宜上分けて考えます)
《防御における間合い》
防御における間合いとは、相手の攻撃が当たらない距離を意味します。
武道や格闘技においては、攻撃と防御は一体であり、どちらかに偏ることはできません。
ポイント制ルールとノックダウン制のルールでは、別の要素も勝利のためには必要ですが、間合いを制することが勝利につながることは同じです。
戦いの理想は、プロボクシングの井上尚弥選手のように「相手の攻撃をもらわないで、こちらの攻撃を当てる」ことが理想です。
防御に関する言葉に「見切る」というものがあります。
防御における「間合いを制する」とは、相手のリーチ(攻撃できる距離)を把握して、相手の攻撃が届かない距離を保つこと、また、攻撃されてもその距離分だけ動いて攻撃をもらわないこと、です。
これは“言うは易く行うは難し”なのです。
ただ、こうしたことは意識して練習しないかぎり決して身に付くものではありません。
それでもある程度経験を積んでいくと、この選手の間合いはこれくらいかな、と感覚で分かることもあります。
しかし、予想していた間合い以上の動きをする選手もいるので、固定観念や過去の経験則ですべて捉えてしまうことは危険です。
この相手との間合いを実感するためには組手やスパークリングなどの練習を積むしかありません。
伝統空手の流派には「型」というものがありますが、型が想定している間合いはすでに決まった固定された距離なので、型練習ばかりやっていると、この実践における間合いを掴む感覚が身に付きません。
なぜなら、試合(実践)において相手は常に動いているからです。
瞬時に相手との距離は変化し続けているからです。
それを掴むには、相手がいる練習をしなければなりません。
防御における間合いを一言でいうと「見切る」となりますが、それを正確に行うためには実際に組手やスパークリングなどの練習を積み、相手との距離感を体で覚えるしかありません。
防御における間合いを制するポイントは、前回の記事(攻防編1)で述べたように「水の動き」です。
つまり、防御において相手の間合いを制するためには、相手の動きを主点としてこちらの動きを展開する、という発想に基づく必要があります。
これは拳法でいう「柔法」の発想です。
相手の攻撃を主点としてこちらの動きを変化、対応させる、ということです。
余談ですが、漫画『北斗の拳』で登場するトキの拳がこの柔の拳です。
相手の身体から導き出すリーチをよく把握し、踏み込みの距離など一度の攻防で掴むことです。
間合いを制することができれば、“距離を作るだけ”で相手の攻撃をかわすことができます。
《攻撃における間合い》
防御における間合いを制するとは、結局相手の攻撃が届く距離よりもほんの少しでも多く距離を取ることですが、それだけでは試合(勝負)に勝つことはできません。
こちらが攻撃をしてポイントを取るかダメージを与える必要があるからです。
ここに「間合い」における難しさがあります。
防御するために間合いを外してばかりいると今度は自分の攻撃ができなくなるのです。
こちらの攻撃を当てるためには自分の攻撃の射程距離(間合い)に入る必要があります。
ですが、それは相手の射程距離(間合い)でもあるのです。
そこには「間合い」だけではない要素が必要となります。
ですが、今回は「間合い」に関するポイントに絞って話をします。
攻撃における間合いを制するということで重要なことは、「自分の射程距離」をよく知っておくことです。
自分の突きや蹴りの届く距離(長さ)を頭ではなく数字でもなく、感覚として把握することです。
それが出来て初めて試合等で有効となります。
相手と自分の間合い(有効な射程距離)に違いがある場合、いかに相手の有効な射程距離を外し、こちらの有効な射程距離を作り出すか、ということが大切なのです。
(身長等の条件が同じであればあるほど、有効な射程距離は同じになってくる)
相手の攻撃が届かない間合いから一気に距離を詰めて(こちらの間合いに入る)攻撃に移ることです。
攻撃を止めたら即間合いを外すことです。
攻撃における間合いを考える上でもうひとつ大切なことは、「射程距離を伸ばす」ということです。
伸びのある突き、伸びていく蹴り、踏み込みの距離を長くする、といった技の向上によって有効な間合いは伸びていきます。
そうした努力(練習)をすることがさらなる成長を促します。
《まとめ》
間合いを制する者が勝負を制するとは?
「相手が簡単に攻撃を仕掛けてこられない距離で相対すること」
「相手の攻撃をかわす距離を作ること」
「いったん攻撃の間合いに入ったら素早く攻撃をしかけること」
「相手に届かないと思っている距離から攻撃を入れること」
「攻撃を止めたら即間合いを取ること(相手から離れる)」
などです。
要するに、相手に有効な距離をできるだけ少なくし、こちらに有利な距離で戦うこと。
そのためには、自分と相手の有効距離を把握すること。
その感覚を身につけるためには、組手(約束組手含む)などの相手と相対する練習を積むことです。
なにごとも意識しなければ身に付きません。
「間合いを制する」と意識を持たない者が「間合いのマジシャン」と呼ばれることはありません。
結局「間合い」とは、「相手の身体から導き出されるリーチ」と「踏み込みの距離」です。
腕や脚の長さが同じ選手でも、踏み込みの距離が違えば有効な射程距離は違ってきます。
固定観念で相対するのではなく、第一に相手の「相手の身体から導き出されるリーチ」をよみ、相手が攻撃を仕掛けてきたときに「踏み込みの距離」を把握することです。
決して忘れてはいけないことは、相手もあなたの間合いをよんでいるということです。
詳しくは別の機会に譲りますが、間合いを制する重要性は、それが攻撃と防御のタイミングを作り出すからです。
「間合い」とは、武術における基本であり、勝負の必須条件なのです。
『間合いを制するものが勝利する。戦闘中は相手との距離(間合い)を常に把握しろ! 人によって有効な間合いは違うもの。相手の得意な間合いを外し、または見切り、自分の得意な間合いで勝負しろ!』
押忍!