『勝負編7 ~無限の可能性と有効性をもつコンビネーション~』
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勝利の秘訣【勝負編7】

『コンビネーションを決めるポイントは、初手で攻め込み、つなぎ技で崩し、得意技(必殺技)で決めることなり! 最も重要なのは初手である。相手に攻め込む初手技を出すときに対処されやすい。相手のどこを狙ってどの技で攻め込むか。さらに相手のどこを狙ってどの技で決めるか! 攻め込む技と決め技が見えたら勝利はつかめる!』

【解説】

《一撃必殺神話を捨てよ!》

空手ではよく「一撃必殺」と言いますが、現実には一撃で相手を倒すことは至難の業です。
試合では、一発の技だけで決める(ポイント制およびノックアウト制両方で)ことも至難の業です。
有段者が素人を相手にするならば、一撃で倒すということはあるでしょう。
また、不意打ちでもあるかもしれません。
ですが、相手も武術を修練しているならば、一撃で決まる(倒す)ということは、ほぼ不可能に近いものです。

ですから、一撃必殺という神話にこだわっていると、どうしても意識レベルでコンビネーション(連続技)へ意識が向かず、連続技の修練がおろそかになってしまいます。
一撃必殺が有効となる基本的条件は以下の2つ。

  1. 相手の急所に入った場合。

武術の基本中の基本は「急所を狙う」ことです。
ですが、安全性を考慮した試合形式になれてしまうと、どうしても武術本来の急所への攻撃ということの意識が薄れます。
極端なことを言うと、「当てればいい」という発想になってしまいます。
ですが、たとえ当たっても相手が実力ある者ならば、「肉を切らせて骨を断つ」という反撃にあって、逆にこちらが倒される展開となる可能性もあるのです。
優れた武術家は、常に「急所」への攻撃を意識しています。
ですから、スポーツ化した武道においてもそうした武術本来の意識を忘れてはいけないのです。

一撃では倒せない、一撃では勝てない、そこで必要となってくるのが技を連続して出す「コンビネーション」なのです。

《コンビネーションを決めるポイント》

コンビネーションとは連続する技で形成される攻撃で、基本形は相手に攻め込む「初手」、相手を崩す「繋ぎ技」決定打を出す「必殺技(得意技)」をもって勝利するものです。
(応用は無限に広がります。最低2つの連続技から始まって繰り出せる数だけのコンビネーションが論理上は可能となります)
この中で、最も重要なのは「必殺技」ではなくて、「初手」であり次に大事なのが「繋ぎ技」で、「必殺技」の重要度は最後です。
ですが、たいていの方はいま示した順番の逆を考えているはずです。

〈コンビネーションにおける「初手」〉

コンビネーションにおける「初手」の重要性を認識しなければ、コンビネーションによって相手を倒すことは至難の業となります。
偶然にうまくいくことはあるかもしれませんが、コンビネーションの重要性通りの攻めが生きていない場合、コンビネーションは上手くいきません。
ここで言うところの「上手くいかない」とは、練習通りにいかない、考えたように決まらないという意味です。

なぜか?
相手は防御し、攻撃してくるからです。
相手もこちらの攻撃を読んで対処するからです。
相手は木偶の坊ではないのです。
こちらを倒しに来るのです。

「初手」がなぜ最も重要なのかといえば、初手によって次の「繋ぎ技=崩し技」につながり、最後の「決め技=必殺技」へと導くからです。
もう一つ理由があります。
それはカウンターを取られる場合の多くが初手に対してだからです。
コンビネーション攻撃をしようとして決め技に意識が行き過ぎると初手及び繋ぎ技(崩し技)がおろそかになるからです。
初手、繋ぎ技、決め技の関係は、初手が成り立たねば繋ぎ技はなく、繋ぎ技が成り立たねば決め技も成り立たないという関係にあるのです。

「初手」には、相手との距離(間合い)を詰める、相手の意識を防御(攻撃への対処)に向ける、という意味があります。
要するに、初手でカウンターを取られたり、うまく捌かれたりすると、その後のコンビネーション技が生きてこないということです。

「初手」で大切なことは、「どこを狙って攻め込む(攻撃する)か」ということです。
そこは計算する(考える)ことです。
この初手を安易に出すコンビネーション攻撃をする人は上手くも強くもなりません。
戦いには必ず戦術があるからです。
そして本能で、あるいは無意識に有効なコンビネーションを繰り出す人は練習において「想定した練習」を嫌と言うほど行ってきた練習の鬼にしかできないのです。
「初手」をどこに攻め込むか、ここが肝心です。
なぜならば、初手は当たらないことが多く、初手を出すときに対処される可能性が高いからです。

付け加えるならば、どこを狙うか+どの技を初手とするのか、ということも考える必要があります。
同じ箇所、同じ初手ばかり出す人は相手に攻撃開始の動きを読まれ、逆に反撃のチャンスを相手に与えていることになります。

〈コンビネーションにおける「繋ぎ技」〉

「初手」でその箇所、その攻撃に意識がいった相手に対して、連続して「繋ぎ技=崩し技」を出します。
これは1・2ではありません。
初手と繋ぎ技で一つの動作あるいは一つの技だと思ってください。
初手と繋ぎ技にすき間ができれば、必ず反撃をくらうからです。

「繋ぎ技」とは、相手の態勢を崩す攻撃のことです。
この「繋ぎ技」がうまくいかなければ「決め技」が決まりません。
ですから、基本的に「初手」と「繋ぎ技」は別の箇所(への攻撃)、別の技であるべきです。
別の箇所(への攻撃)、別の技によって相手の意識を崩し、体勢も崩し、どこかに隙を作るためのものです。
ここまでが上手くいけば、「決め技」が決まる確率は高くなります。
というよりも、そこまでしなければ決まるものではないということです。

なお、応用として「繋ぎ技」を複数出すことが高度なテクニックとしてあります。

こうしたことを普段の練習で考え抜き、体に叩きこむことです。
固定観念を捨て、ありとあらゆる場面を想定して連続技(コンビネーション)を身に付けるのです。

〈コンビネーションにおける「決め技」〉

「初手」、「繋ぎ技」がうまくいけば、相手の意識はどこから攻撃がくるのかという予想する意識が薄れます。だから、最後のトドメとして「必殺技=決め技」が決まるのです。
(ただし、どんな攻撃でも本能的に動きますが)
「必殺技=決め技」も当然重要ですが、攻め手が「決め技=得意技」のことばかり意識すると相手に覚られます。
相手も、こちらの得意技を把握しようとしているのです。
だから、当然得意技(決め技)を注意するのです。

よって、コンビネーション技(連続技)を決める重要度は、「初手」→「繋ぎ技」→「決め技」となります。初手と繋ぎ技が上手くいけば、決め技が決まる確率は高まるのです。

応用として、「コンビネーション」をいくつか重ねることによって、第一のコンビネーションが「初手(攻撃)」、第二のコンビネーションが「繋ぎ技(攻撃)」、第三のコンビネーションが「決め技(攻撃)」となることも言っておきます。
(初心者には無理)

間違えてはいけないのは、初手→繋ぎ技→決め技が1・2・3ではないということです。
この動作は三つで一つです。
それと重要なことは、修練していたコンビネーションがあり、その場合の決め技は決まっているでしょうが、相手の状態(状況)によって最後の決め技を選択する(一瞬で変更する)ことが本当は重要です。
ただし、一瞬で本来の決め技と違う技に変更することは超高度なテクニックなので、武術初心者には無理でしょう。
ですが、修練を重ねてその境地、その動きをいつの日か習得することを目指して努力してください。

「決め技」で重要なことは、「どこに隙」があるのか、どこに何の技を繰り出したらいいのかという判断です。
その判断は、一瞬とも呼べない時間で行わねばなりません。
逆に言うと、初手、繋ぎ技(崩し技)とは、相手の意識や体勢を崩して隙を作るためにこそあるということであり、それは必殺技を繰り出すためにこそあるということです。
ですから、本来は、決め技は無限の可能性を持っていなければならないのです。

修練を積んでいる人であれば、連続した攻撃の最中に相手の隙が見えれば、必ずその箇所への的確な技が無意識にでるはずです。

すべては日頃から考えに考え抜いた連続技を修練し、その効果を確認し、修正と磨きをかけることが大前提です。

得意技と初手は相手に把握されやすいということを忘れないでください。

《まとめ》

一撃で相手を倒すことは至難の業。
武術の基本中の基本は「急所を狙う」。
優れた武術家は、常に「急所」への攻撃を意識している。

コンビネーションの基本形は、相手に攻め込む「初手」、相手を崩す「繋ぎ技」、決定打を出す「必殺技(得意技)」。
コンビネーションで最も重要なのは「必殺技」ではなくて、「初手」。
「初手」がなぜ最も重要なのかといえば、初手によって次の「繋ぎ技=崩し技」につながり、最後の「決め技=必殺技」へと導くからということと、カウンターと取られる場合の多くが初手だから。
「初手」で大切なことは、「どこを狙って攻め込む(攻撃する)か」。

初手と繋ぎ技で一つの動作あるいは一つの技。
「繋ぎ技」とは、相手の態勢を崩す攻撃のこと
「繋ぎ技」がうまくいかなければ「決め技」が決まらない。

攻め手が「決め技=得意技」のことばかり意識すると相手に覚られる。
コンビネーション技(連続技)を決める重要度は、「初手」→「繋ぎ技」→「決め技」。
初手と繋ぎ技が上手くいけば、「決め技」が決まる確率は高まる。
初手→繋ぎ技→決め技は、一つの技(一つの動作)。
「決め技」で重要なことは、「どこに隙」があるのか、どこに何の技を繰り出したらいいのかという判断。
決め技は無限の可能性を持っていなければならない。

日頃から考えに考え抜いた連続技を修練し、その効果を確認し、修正と磨きをかける。

押忍!

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